第85話 評判と羨望
1年生だけで戦う団体戦である新人王戦は、帝都学園の優勝が決まり、2年生から5年生までで構成される帝龍祭団体戦も帝都学園が優勝となった。
アリシア学園長はとても機嫌が良い。
学園長室には優勝のトロフィーが二つ飾られ、アリシア学園長がそのトロフィーを見ながら紅茶を飲んでいる。
トロフィーを見るアリシアの表情は嬉しすぎてまったく締まらない。
その向かいには、元エルフの女王であり、アリシアの師匠でもあるルミナスが憂鬱そうな表情を浮かべていた。
「クククク・・これで我が学園の完全優勝は決まったも同じ」
「ハァ〜、アリシア。やはり使徒様であるレン様を使うのは感心しないわ」
「ルミナス様。あなたも賛成したでしょう」
「まさか、個人戦にまで登録とは思わなかったのよ」
最初は、新人王戦のみのはずであり、団体戦だけなら味方メンバーが多くいるので目立たないから良いだろうとの考えだった。
しかし、いざは始まると団体戦なのに一人で圧倒的な無双状態で優勝。
適当に手加減して戦うはずなのに、あれの何処が手加減しているのかと言いたかったが、使った魔法が殲滅魔法では無かったことが唯一の救いだと考えている。
さらに、レンの祖母が勝手にレンの個人戦参加登録をしていた。
このことは完全に二人の想定外の事態となっている。
「個人戦の件は、レン君の家庭の問題。こちらも知らぬ間に登録されてましたから、もはやどうにもなりませんよ」
「そうよね」
「この際、レン君の力をしっかりと見せておくいいチャンスだと考えましょう」
「ハァ〜、この先余計なトラブルが起きないことを祈るだけね」
「ですが、自らトラブルを引き寄せているようにしか見えませんけどね」
「それは昔から変わらないわね。だから会場の警備はしっかり行なってね」
「今回は、陛下にお願いして騎士団の精鋭を貸してもらってますし、審判役にS級冒険者ランディに来てもらってますから警備には問題はないかと思います」
二人はこの後、魔法陣の設置と確認に関して話し合っていた。
ーーーーー
帝都の街中では、帝龍祭の試合で例年に無い盛り上がりを見せていた。
通りには、例年の倍近い人々が溢れ、宿は何処も満杯の状態であった。
行き交う人々は口々に帝龍祭の試合内容を口にしている。
『今年はすごい試合が多いな』
『特に帝都学園の活躍がすごいぞ』
『団体戦は二つとも圧倒的だったよ』
『帝都学園に勝てるところなんてないだろう』
『個人戦もすごいぞ。予選突破者の半数が帝都学園だろ』
『特に、レン・ウィンダーとか云う1年生がすごいそうじゃないか』
『水と氷魔法を駆使した氷結の魔王と呼ばれているらしいよ』
『見た見た。水のツナミ魔法や氷の幻惑魔法とか凄いよ。誰も使えないオリジナル魔法ばかりを使っているよ』
『俺も試合を見たぞ。あれは驚くぞ』
『1年生なのにオリジナル魔法だと。嘘だろう』
『レン・ウィンダーだと・・学生侯爵のことか』
『ワインで有名なところじゃないか』
『あの金色に輝くワインか、あれは一度口にすると癖になるんだよな』
そんな人々の噂話をカフェのテラスで不機嫌そうに聞いている男がいた。
長い金髪、整った顔立ち、特別仕立ての服に身を包んでいる。
「忌々しい。誰もがレン・ウィンダーのことばかり口にする」
「オレガノ様。仕方ありませんわ。それだけレン・ウィンダーの使った魔法や戦いは衝撃的でしたから。1年生でいくつものオリジナル魔法を繰り出し、人々から二つ名で呼ばれる。そんな人物は、レン・ウィンダーの祖父母のお二人以来ですから。それにウィンダー侯爵として独立されてから領地で生み出される特産品はどれも素晴らしいものばかり。このチョコレートもその一つらしいですよ」
オレガノの向かいに座り、コーヒーを飲み、チョコレートをつまむ長い漆黒の髪をしている女は穏やかな微笑を浮かべている。
「帝都の魔王と氷結の魔女か・・だから忌々しいのだ。このオレガノ様の個人戦予選での活躍が霞んでしまった。元々公爵家が産んだ無能との評判だったはずだ。実の親があれだけ無能だと言っていたのだぞ。そんな奴がどうしてあそこまでの活躍ができるのだ」
「公爵の目が節穴だった。もしくは眠っていた才能が何かのきっかけで開花したのか。どっちにしろ尋常ではない才能ですよ」
オレガノは、レン・ウィンダーへの高評価を聞くたびに怒りとどうにもならない妬みに似た感情に支配される。そんな負の感情が膨れ上がっていく。
女はそんなオレガノの姿を満足そうに見ている。
「順調にいけば、個人戦決勝でオレガノ様はレン・ウィンダーと戦います。そこでオレガノ様の圧倒的な力を見せつけてやれば良いのですよ」
「そんなことは当然だろう。決勝では奴を徹底的に叩き潰し、帝国中にこのオレガノ様が最強だと知らしめてやる」
同時に全身からドス黒いオーラが漏れ出てくる。
「オレガノ様。その力は個人戦決勝まで取っておきましょう。こんな街中で見せる力ではありませんよ」
「そうだったな。どうも最近、気持ちが昂りやすくなっている」
「気をつけなくてはいけませんよ」
「分かっている」
オレガノはそれだけ言うとカフェを後にした。
オレガノと話していた女の後ろからフードを深く被った人物が声をかけた。
「パメラ、うまく化けたものだ」
「化けただなんて、失礼ね。いくつもある顔のうちの一つがセレン公国オレガノ公爵家の魔法教師
と言うだけのことでしょう」
「良い具合に仕上がっているようで何よりだ」
「きっと面白いものが見られると思うわ」
「期待している」
フードの人物とパメラは別々にカフェを出て行った。
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