第76話 水の大精霊ウィンの帝都散策(1)
水の大精霊ウィンは基本暇である。
契約者は、慈母神アーテル様の使徒であるレン・ウィンダー侯爵であるが、特に拘束されることもなく、ウィンもレンを拘束することもなく、お互いに自由にしている。
契約者であるレンのところには、いつでも瞬時に移動できるから問題無い。
そのため、帝都の精霊の湖にいたかと思えば、精霊の森奥深くにいたり、各地の水の精霊たちと戯れていたりする。
帝都の中の彼方此方に、レンが作り出した水の大精霊の像がある。
ウィンの像は慈母神アーテル様の像の横に置かれていた。
慈母神アーテル様の像もレンが作り出したもので、本物の神気を宿しているから、そこから神気を補給でき、そこにも自由に行き来できる。
今日は、帝都の中を散策していた。
帝都には多くの綺麗な泉や噴水が整備されているから意外と精霊たちがいる。
散策と言っても、その姿を見ることができる人は少ないと言うか、そもそも精霊が見える人が極端に少ない。
たとえ見ることができても大精霊とは分からないだろう。
それほどまでに巧みな隠蔽を行なっていた。
帝都の売り出されている珍しいものを見て回ったが、特に欲しいものは見つからない。
果物やお菓子ならば、ウィンダー領の物に勝るものは無いと思っているので、特に興味が湧かない。
帝都で売られている果物の最高級品は、レンの作り出した果物。
ウィンダー領であれば取れたてがすぐに食べられる。
お菓子もレンの作り出したチョコレートがお菓子の最高級品としてもてはやされている。
それも帝都のウィンダー侯爵邸やウィンダー領であれば、果汁を練り込んだフルーティーなチョコがすぐに食べられる。
帝都で売られているものは、見たかぎりウィンダー領の物よりランクがいくつか落ちる品ばかり。
早々に飽きて、慈母神アーテル様を祀る教会の屋根の上で横になって通りを歩く人を見ていた。
帝都では、ここと精霊の湖、ウィンダー侯爵邸が清浄な力が満ちていて気持ちがいい。
帝都にいる他の精霊たちが、教会の屋根の上に水の大精霊ウィンがいることが分かると順次やってくるようになる。
大精霊の近くにいると気が良いからであった。
同時に他の精霊たちが帝都のいろんな情報をウィンにもたらしてくれる。
『ウィン様』
帝都の精霊の湖にいる中級の水の精霊ミィである。
ウィンを少し小さく幼くした感じであった。
『ミィ、どうしたの』
『帝龍祭が近いせいか多くの人が帝都に来ていますが、素行の良く無い者たちがいて困っております』
『どんなふうに』
『泉や噴水を汚す者達が後立ちません』
『そんなことをする連中がいたら懲らしめていいよ。魔法使いであっても僕らをどうこうできない。それでも汚すなら僕が相手になるよ』
ウィンは帝都の水の精霊たちと意識を同調させる。
するといま小さな泉の水を汚す行為をしている連中が目に入る。
そこは帝都の街中にあり、周囲をレンガで補強され、直径20mほどの小さな泉。
地下から綺麗な水が湧き出してきている。
どうやら水を汚しているのは、帝龍祭参加の学生達のようだ。
すぐ近くで近隣の住民が学生達に注意をしているが止める気は無いようだ。
ウィンはその場所に意識を集中する。
『その泉は精霊様の泉だ。汚すような真似はやめなさい』
『馬鹿じゃねぇ。精霊なんていねよ。今どき馬鹿だろ』
『ハハハハ・・今どきそんなこと信じてるの』
『ウケる〜、馬鹿じゃない』
『精霊の怒りを買うぞすぐにやめなさい』
ウィンは学生であろうと許す気は無い。
すぐさま水の精霊魔法を発動させる。
上空から泉の水を汚した者達に強烈な水の塊が落ちてくる。
滝のような雨ではない。
巨大な水の塊である。
誰かが落ちてくる水に気がつく。
「上を見ろ」
「水だ。水の塊が落ちてくるぞ」
「龍だ。龍の姿をした水が落ちてくぞ」
「水の精霊様の怒りだ〜。逃げろ〜!」
住民は一斉に慌てて逃げる。
ウィンは噴水を汚していた者達の足元にも魔法を発動させ、逃げられないように氷の拘束魔法を発動していた。
動けなくなっていることに気がつき学生達は顔面蒼白である。
『なんだ・・足が・』
『動けない』
一部の者たちは、防御魔法を発動させる。
しかし、学生の防御魔法ではウィンの魔法を防ぐことはできない。
防御魔法を突き破り、巨大な水の龍が上空からその者達に叩きつけられた。
その者達全員は、水の勢いで壁に吹き飛ばされ叩きつけられて気を失う。
そしてその巨大な水の龍は、泉に降り注ぎ汚れた水を全て押し出して清浄な状態にして収まった。
噴水を汚していた者たちを罰することができて大満足の笑顔。
『こんな感じでいいか』
『ウイン様、もうひとつあるのですが』
『どんなこと』
『妙な魔法陣を彼方此方に設置している者達がいます』
『魔法陣?』
『はい』
『見て見ないと分かんないな。案内して』
『はい、わかりました』
ウィンは、ミィの案内で魔法陣の場所に移動する。
『ヘェ〜、わざわざ隠蔽魔法を使っているのか。この程度の隠蔽なら僕には全く通用しなけどね』
ウィンはその魔法陣を読み始める。
『わざわざこんな物を設置するとはね、馬鹿だろう』
ウィンは、魔法陣をいじり始める。
『こんなもんでいいか。ミィ他にもあるのかい』
『はい、いつくもあります』
『魔法陣の魔法式を全部書き換えてしまうから、全て案内してくれるかい』
『承知いたしました』
水の大精霊ウィンは謎の魔法陣を書き換えるために帝都中を飛び回るのであった。
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