第29話 婚約者の素顔

第一皇女シャーロットが帝都のウィンダー侯爵邸にやって来た。

2人の親睦を深めるという名目でのお茶会にやってきたのだ。

当然、その予定に合わせてヨーク領から事前に帝都の屋敷に移動してきている。

多くの警護の騎士が付き添い帝国の紋章に入った馬車からは、ゆっくりとシャーロット皇女が降りて来た。

当然のように周辺は厳戒態勢である。

何度もレンの命が狙われたことがあることは、皇帝も知っているため必要以上に警戒をしている。

しかし、シャーロット皇女とレンの周囲だけは、そのような物々しい雰囲気を感じさせないように配慮されていた。

玄関先にはレンと一緒に祖父ハワード・祖母のルナが出迎えに立っていた。


「シャーロット様、ようこそいらっしゃいました」

「レン・ウィンダー侯爵。お出迎えありがとうございます」


レンの出迎えに、にっこりと微笑むシャーロット。


「シャーロット様。こちらにどうぞ」


レンの案内で邸内へと入っていく。

ウィンダー侯爵邸の玄関ホールには、レンがスキルで作り上げた慈母神アーテルの神像が飾られていた。

慈母神アーテルの神像から溢れ出てくる神力は、見るもの達の心を捉える。

そして、言葉にできない安らぎを与えていた。


「もしかしてこの像は、レン様が作ったのですか」

「は・はい、スキルを使って作り上げたもので、これより大きなものを皇帝陛下に献上させていただきました」

「やはり、城にあった神像は、レン様の作ったものだったのですね」


シャーロット皇女は魔力の色や匂いを感じる特異体質であったが、周囲の誰にもその事を話していない。父である皇帝陛下や母である皇妃殿下にも話していなかった。

ある日突如城に飾られた慈母神アーテル様の神像から感じる安らぎの魔力の匂いと、目の前にある神像から感じる魔力の匂い、そして、レン本人から溢れてくる魔力の匂いが同じであった。


「どうして分かったのですか」

「フフフフ・・・それは秘密です」

「・・・・・」

「そのうち教えたあげます」

「は・はあ・・」


なぜ分かったのか納得できないレンであった。


「レン様、ぜひスキルで作るところを見せてください」

「見ても面白いものではありませんよ。黙ってひたすら集中して作るだけですから、それよりも・・・」

「かまいません。見たい・見たいのです。ぜひ、見せてください。」

「は・はい・・」


真剣な眼差しで見つめているシャーロットの勢いに押されてしまい、つい承知してしまった。


「アーテル様の像の隣にあるのはなんです」

「水の大精霊の像です」

「なんですって!!!ぜひ、私に同じ物を下さい」


シャーロットは思わずレンの手を握り顔を思いっきり近づけて頼み込む。


「近い・近すぎです。わかりましたから、落ち着いてください」

「私としたことが・・・すいません」


レンの言葉に我にかえり顔を赤くするシャーロット。


「それではテラスに行きましょう。そこで作りますから」


一行はテラスへと移動していく。

庭を見渡せるテラスには、円形のテーブルと椅子が置かれている。

レンはシャーロットを円形テーブルの席へと案内する。


「もしかしてこれもレン様が作ったのですか」


テーブルに駆け寄り手で触れるシャーロット。


「は・はい。このテーブルと椅子も私がスキルの力で作りました」

「素晴らしい!!!本当に素晴らしいです」


テーブルと椅子に顔を近づけ魔力の匂いを嗅ぐ。

周囲の者達は、シャーロットがテーブルに顔を近づけて何をしているのか分からない。

お付きの者達もしばらくの間呆気に取られていた。


「本当に素晴らしい。心が安らぎます」


シャーロットは1人満足そうに笑顔を浮かべている。


「レン様」

「は・はい」

「同じテーブルと椅子もお願い出来ませんか。ぜひ、欲しいのです」


シャーロットに両手を握られ、じっと見つめられてしまう。


「は・・はい・・後ほどお作ります」

「レン様ありがとうございます」


満面の笑みを向けられ照れてしまうレン。

ウィンダー家のメイド達がテーブルの上にが紅茶とケーキを用意した。


「おや、この香りはアムール産かしら」

「流石、シャーロット様その通りです。アムール産の紅茶がお好きと聞き用意させました。それとフルーツがお好きと聞きフルーツをたっぷり使ったフルーツケーキを用意させました」

「レン様、2人きりの時はお互いに様をつけずに名前だけで呼び合いたいです」

シャーロットから甘えるかのような目で訴えられドキドキしてしまうレン。

「よ・よろしいのですか」

「かまいません・・レ・・レン」

「シャー・・・シャーロット」

「はい。今後はその様にお願いします」


2人は照れながら紅茶を飲み、ケーキを食べている。

暫くして、レンは像を作ることにした。


「そ・それでは水の大精霊の像をスキルで作り出したいと思います」


レンがスキルを発動させて水の大精霊ウィンの像を作る様子を、近くで瞬きもせずにジッと見つめているシャーロット。

魔力の塊が徐々に水の大精霊ウィンの姿に変わっていく。

その度に歓声を上げる。

レンはいつも以上に集中して像を作っていた。

目の前で作る以上は、より良いものを渡したいと思い神経を集中している。

そして満足のいく水の大精霊像が出来上がった。


「この素晴らしい精霊の像は大切にいたします」


そして、レンはすぐにテーブルと椅子を作り出し、お付きの者達に渡す。

シャーロットの従者達はすぐさまテーブルと椅子を持ち帰るために運び出す。

その時、レンは他に何かシャーロットが喜ぶものが作れないか考えていた。


「あっ、そうだ。もう一つお作りして渡したいものがあります」

「それはどんなものなのですか」

「それは見てのお楽しみです」


レンは早速作り出すことにする。

作るのは白銀のペンダント。

ペンダントトップに慈母神アーテル様の姿を入れる。

目の前の空間に魔力を集め、イメージしていく。

まず、ペンダントトップに慈母神アーテル様のお顔を作り込んでいく。

小さいからより慎重に、より丁寧にゆっくりと魔力操作をしていく。

何度かやり直しをしながらペンダントトップが出来上がった。

チェーンの部分もより慎重にイメージしていく。

そして、ペンダントが出来上がった。

テーブルの上にペンダントが白銀の輝きを放っている。

神眼でペンダントを見てみる。


破邪のペンダント

製作者:

  レン・ウィンダー

効 果:

 ・近づいてくる邪鬼邪霊を浄化する

 ・あらゆる呪い、呪術から身を守る

 ・精神支配系魔法の力から身を守る

 ・精神支配系スキルの力から身を守る

 ・精神安定効果

補足事項:

 ・慈母神の神力が込められている

 ・使徒レンの神聖魔法が込められている

 ・毒物には効果は無い


相変わらずのぶっ飛び機能満載のペンダントが出来上がった。 

 

「レン。これは一体・・・木でできているの?」

「スキルで作り出せる特殊な木でできています」

「特殊な木?」

「そうだよ。それよりつけてあげよう」


レンはペンダントを持ち、シャーロットの後ろにまわりペンダントを付けてあげた。


「あ〜素晴らしい・・香り」

「エッ・・香り?」

「いえ、何でもありません。これは素晴らしいです。大切にします」


満面の笑みを浮かべるシャーロットの姿にとても満足したレンであった。


ちなみにペンダントを製作したためかスキル【木】に新しい派生スキルができていた。


 スキル:

  木 Lv7

    ・木製品製作 【Ⅶ】

    ・魔力吸収  【Ⅲ】(MAX)

    ・木と森と大地の恵み【Ⅵ】

    ・ウッドゴーレム

    ・神像作成

    ・植物創造

    ・神器作成 (NEW)

補足事項:(神眼保持者のみ閲覧可能)

  ※神器作成

   慈母神アーテルの使徒レンが作成する

  ことにより慈母神アーテルの神力とレン

  の神聖魔法が自動的に込められることで

  あらゆる神器を作成できる。

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