暁のバイン
@vinezone
第1話 仁
「リモルー王国」それはゼリヤ大陸の英雄ザカスが旅の途中に偶然発見し、生涯その存在を隠し続けた地図にも載っていない禁断の場所である。
周りを木々に囲まれたこの場所には原住民であるリモルー人の他に様々な種族のモンスターや妖精たちが生息していた。リモルー王国第一王女であるアインハム・ルウカは幼少の頃から優しくて思いやりがあり、国民の誰からも愛される存在だった。そして、王族の女性に代々受け継がれている《シンパシーソング》「仁歌」の使い手でもあった。
ルウカの歌声には不思議な力があり、その歌声を聴いたモンスターや妖精たちは《リバレーションソング》「解歌」を聴くまで心を支配されるようになる。リモルー王国が今まで他種族から侵略されることなく、共存出来てきたのはこの仁歌の能力によるものが大きい。
そして、かの大戦で敵国ナーガ帝国を討ち滅ぼし、ゼリヤ大陸の東側をほぼ手中に収めた皇帝ザカスは国民から英雄と崇められたがそれで満足することなく、更なる領土拡大をすべく7人の宦官を率いて侵攻を開始した。そんな英雄ザカスが次の目的地に選んだのは西の大国ブッセではなく海を渡った未開の地であった。旧ナーガ帝国から数ヶ月の航海の末辿り着いた未開の地、それこそ今まで誰も足を踏み入れる事が無かった「リモルー王国」である。
しかし、武器を携え侵攻を開始したザカス率いる侵略軍は現地に生息する数多のモンスターの襲撃に遭うことになる。モンスターの援軍が続き疲弊と食糧も底をつき厳しい戦いが続いた。なんとか善戦していたものの敗戦濃厚かと思われたそんな最中、ザカスは一人のリモルー人に遭遇する。ルウカの母親でありリモルー王国女王アインハム・ノドカである。そしてこの出逢いをきっかけに今運命の歯車が動き出すのであった。
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