召喚士アデルの災難 〜なんで!?俺が召喚したのは最強勇者のはずだったのにアホっぽい男がきた〜
たけ てん
第1話 勇者召喚
「マジ酔った〜
ちょっと飲み過ぎちった〜」
「またかよー、
明け方の渋谷、道玄坂を下る男の姿があった。
「あっ」
「ん?ここどこっすかね〜?あー夢か〜。床の石ツルツルして冷たくて気持ち〜」
魔法陣の中心に現れた男は、一度起き上がったかに見えたが、すぐに床に頬擦りをしながら寝た。
「・・・アデル、これが勇者か?」
「えぇ。最強の勇者です。」
俺は堂々と胸を張ってそう言った。
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そして今、俺は頭を抱えている。
その男はその後しばらくして起きた。
そして吐いた。・・・なぜ?
「夢じゃないみた〜い。ここどこ〜?
俺もしかして宇宙人に拐われた?マジか〜、スゲ〜」
「コホンッ、あなたは私アデルに召喚された勇者です。」
「ショウカン?何それ〜?羊羹のこと〜?」
「ヨウカンというのが何かは知りませんが、現在人間が住む国は魔王の出現により天災や魔物の脅威に晒されております。どうか魔王を討伐して平和な世の中を取り戻していただきたい。
「天才?それいいじゃん。マモノってのは知らないけど〜
それでここはどこなの?俺、何でここにいるの〜?」
「先ほども説明致しましたが、あなたは私に勇者として召喚されたのです。恐らく別の世界からきたのでしょう。」
「あーなるほど〜外国ってことね。なんかここ教会っぽいもんね〜、フランス?イギリス?ドイツ?イタリア?どこ?」
「違います。ここはグランツ王国です。」
「へ〜、あれ?俺の言葉分かんの?凄くない?え?日本語?それとも俺が天才になった?ヤバ〜」
俺の言葉が分かるとは言うが、どうもこちらの話を理解してはいないらしい。いや、理解する気がないのか?
読めない男だ。
「とりあえずステータスを見せていただけますか?」
「え〜?何それ〜?ステーキのこと?あ、スマホ画面?何のアプリ〜?」
「『ステータスオールオープン』と唱えていただけますか?」
「ステータスオールオープン。」
ブンッ
「わぁ!何これ、スゲーどうやってやってんの?この画面浮いてんの?」
陛下たちと一緒に彼のステータスを見ると、
=====
名前:怜音(レオン)
種族:人間
年齢:20
職業:勇者(大学生)
レベル:1
HP:1,000,000/1,000,000
MP:500,000/500,000
攻撃力:80,000
防御力:50,000
運:120
魔法:基本生活魔法、水、火、風、土、光、聖、空間
スキル:言語理解、無詠唱、アイテムボックス∞、鑑定、経験値増量、コピー
=====
「おぉ、これは素晴らしい!アデルでかしたぞ。レベル1でこれほどまでとは。これなら魔王にも勝てるであろう!」
「ゲーム?ゲームなの?これ。
スゲー、怜音って俺と名前同じじゃーん。」
「いえ、これはあなたのステータスですよ。レオン殿。」
「全然分かんない。まぁいっか〜
それで俺いつ帰れんの〜?」
「あなたには申し訳ないが帰れません。」
「そっか〜、そうなんだ〜、んー別にいっか。やりたいことも無かったし、どこででも生きていれればいいや。」
「ご理解いただきありがとうございます。」
帰れないと知ると揉めるかと思ったが、あっさり受け入れたようだ。
ますます読めない男だ。
「あれは何語を話しているんだ?半分ほど分からなかった。」
「陛下、私も分かりませんでした。ここは召喚したアデル殿に任せようではありませんか。」
「そうだな。アデル、彼のことは頼んだぞ。」
「え?」
陛下と宰相は面倒ごとを俺に押し付けて、護衛と司教を連れてさっさと部屋を出ていった。
嘘だろ?
召喚を行えとは言われていたが、召喚後の面倒見までさせられるなど聞いていない。
そして、俺は頭を抱えることになった。
「えーっと、アデルさんでしたっけ?大丈夫?頭痛いの?」
「いえ・・・大丈夫ではないですが、大丈夫です。・・・たぶん。
レオン殿、この世界に来たばかりで分からないことばかりでしょう。
なるべくサポートするようにします。」
「うん。分かった。
ねーねー、レオン殿っての気持ち悪いからさ、レオンでいいよー。敬語とかもいらないし。」
「ふぅ、じゃあ俺のことはアデルでいい。」
もういいや。俺も敬語なんかは得意じゃないんだ。自分で私とか言うのも気持ち悪いと思っていた。
「アデルー、俺、シャワー浴びたいし歯磨きしたいんだけどー、風呂とかある?」
「あぁ、レオンの滞在場所や服や武器などもどうするのか陛下に聞いておかなければならないか。」
「ヘイカ?それ誰?」
「さっきいたろ。頭に金の王冠を被った人が。」
「あー金髪のパーマかかった人?」
「パーマカカッタというのは分からんが、金髪の人だ。」
「へー、あの人ヘイカって名前なんだ。」
「は?違う。ここグランツ王国の国王陛下だ。」
「あ〜、王様ってこと?マジ?スゲ〜
俺、王様に会ったの?凄くない?」
「まぁ、レオンは陛下が直々に迎えるほどこの国にとって、いやこの国だけでなくこの世界に住む人族にとって重要な人だということだ。」
「マジ?俺、生徒会長とかやったことないんだけど。あれ?生徒会長でも王様なんかに会えなくない?うーん、分かんないけどまぁいっか。」
「とりあえず移動しましょう。」
ふぅ、これほどの強大な力を持っている人物が横暴な者でなくてよかった。
あのステータスを見る限り、暴れ出したら俺の力では止められないからな。
おかしな言動をするが、悪い考えを持つ者ではないように思う。
レオンは俺の後に続いて部屋を出ると、周りをキョロキョロしながら歩いている。
俺にとっては別に珍しくもない物であっても、違う世界からきたレオンにとっては珍しい物なんだろうな。
「あれ?俺のスマホ無いんだけど。」
「スマホ?」
「スマートフォン。そういえば鞄も無いじゃん。」
「召喚された時は何も持っていなかったぞ。」
「マジかー日本に置き忘れたかー
誰かに拾われて中身見られたら嫌だなー
変な動画とか画像とかいっぱい入ってたし。SNSとかに流出したら最悪じゃん。でももう戻れないしいっか。炎上しても俺は知ることもないってことだよねー?」
「あぁ、何のことかは分からんが、別の世界で燃えていても知る術はないな。」
燃えるような危険なものを持っていたということか?やはりこの男は危険人物なのか?
陛下の側近から聞かされた内容に俺は再びため息を吐いた。
為人が分からない現状で、陛下の側にあれほどの戦闘力がある者を置いておくのは無理だと。
レオンと俺がちょっと裕福に暮らせる程度の金は渡すし、武器や防具については購入する際に王家に請求するよう言ってくれればいいから、面倒を見てやってほしい。
騎士団の訓練所は自由に使っていい。
剣や魔法の指導が必要なら言っくれれば指導官を用意する。
あとはよろしく。
だそうだ。
俺の戦闘力などたかが知れている。
強い冒険者たちとパーティーを組ませて、俺はそれを見届けるまででいいだろう。
とりあえず、基礎知識を教えて、魔法や戦闘の基礎を教えて、ある程度ものになるまでは俺が何とかするのか。
住む場所はとりあえず俺の家で我慢してもらって、早急に彼の家を見つけなければ。右も左も分からない者が1人で暮らせるのか?
俺も一緒に住むか・・・。
仕方ない。2人で住める家を探すか。
一緒に住むならこんな変な男じゃなく、可愛いくて料理上手な女の子と住みたかったな。
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