七海2

「七海さんは男性に会ったことある?」


そう尋ねると七海さんの瞳から光が消えた気がしたが、次の瞬間元に戻っていた。


(ん?気のせいか?)


「勿論ありませんが……急にどうしたのです?…もしかして、男性とあいたいとか…?」

「いや、違う違う!!ただ私男性に会ったことがないし、男性っているのかなって思っただけで……」


 すると、信じられないものを見たような顔をした七海さんが尋ねてきた。


「本気で言っているの?男性が居ると?」

「えっ!?居ないの!?」


その言葉にビックリしていると、七海さんは大きな溜息をついて話し始めた。


「はぁっ…。本当に今日の華恋はおかしいわよ?こんなこと常識です!良い?今の世の中は全ての人が女性で、男性は今から約100年前に謎の奇病で一斉に亡くなって絶滅したと言われてるわ。けれど、それで子孫が作れなくなった人類は進化して、女性同士でも子供が作れるようになったの。ここまでは良い?」

「えっ!?じゃあもうホントに男性は居ないの!?それに、女性同士で子供ってどうやって?」

「ええ。だから本当に男性はもう居ないのよ。子供は………知りたい?知りたいなら今すぐ教えてあげるけど?」


 そう言ったななみさんの雰囲気は、いつの間にか真剣なものになっていて、視線もどこか獲物を見るようなものに変わり、不敵な笑みを浮かべていた。


(なんか……怖い…)


「いや…やっぱり大丈夫かな……」


そう言うとななみさんの雰囲気は、霧散して柔らかい雰囲気に戻った。


「そう……。まぁそういうことよ。それで続きだけど、女性同士で付き合うのが普通になってからは、昔は基本的に受け身だった女性もアプローチしたり外見やプロポーションを磨いたりしないと、付き合ったり結婚したりなんてことは難しくなっていったの。だから時代が進むにつれて、女性は皆、積極的になっていったってわけ。分かった?」


「何となくは?」


「だから今日の華恋は心配なのよ。なんだかおっとりしているし、可愛いんだから気をつけなさい。以前の華恋なら心配無かったけれど……。学校では出来るだけ私と一緒にいなさい。いいわね?」


「は、はい!」


 机に乗り出し、顔を至近距離まで近づけながらそう言われて、つい返事をしてしまった。


(有無を言わさない態度だった…。ビックリしたー。そんなにおっとりしてるか?でも男だった時もどこかズレてるだとか言われてた気がする。そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけどな)


「はぁ…。本当に分かってるのかしら。今日の華恋を見ていると不安だわ…。それで?結局聞きたいことってこれだけ?それならもう帰るわよ」

「えっと……。思ったより知らない事ばかりだったのでもうちょっと詳しく聞きたいなぁ…と、駄目かな?」


 そう言うと盛大に溜息をつかれ、その後も小言を挟まれながらも色々と教えて貰った。


「今日は本当にありがとう。感謝してるよ。ありがとう七海」


そう言うとなぜか七海は、頬を赤く染めて顔を逸らした。


(? どうしたんだ?)


「いえ…大丈夫です。ただ今日のことで色々心配になったので明日は一緒に登校しましょう」

「分かった。じゃあまた明日ね。おやすみ〜」

「ええ、また明日…」


(今日は沢山知らないことを知れて楽しかったな。なんだかんだ七海とも仲良くなれたし、明日からが楽しみだ!!)


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