魔王、倒されてました。~異世界でやることないから楽しもうと思ったけど、旅に出ろって言われました~
海陽
旅立ち
物語の幕開け
俺は赤羽颯。
多少有名……とは言えない、可もなく不可もなくみたいな普っ通~の会社に就職してる。
今年で就職5年目だから立場も少し上がって、可愛い(女)後輩もできたんだけどね?
ここ最近はこの会社受けるする人数が減って……そもそも就活するような人が減って……少子化問題深刻。
社員が少ないからこうして俺が外に出て荷物を運んでるわけですよ。
「はぁ。何で俺までこんなことをやらないといけないんだ。
ま、可愛い(他意はない)後輩にやらせるよかぁマシだけどさ……」
会社の中では重要な荷物を徒歩で運びながら少しの愚痴を言う。
少し疲れたので、休憩をとるために荷物を置いた瞬間……。
ドタドタと騒々しい音が聞こえてきた。
「誰か走ってんのか? ったくちょっとは静かにぃッ??」
グサッ。
「何の音……」
少し確認すると、自分の脇腹にナイフが刺さっていることが分かった。
不思議と痛みは感じていないが……。
ははっ、感覚麻痺してんのか? いや笑えねぇな。
俺は座っているのに、現在進行形でバランスを崩して倒れそうになっているのがわかる。
何とか起き上がって……駄目だな。体が動かない。
誰かの悲鳴がぼんやり聞こえる。
自分の周りが赤く水たまりになっている。
段々と意識が薄くなっていき、俺は目の前が見えなくなった……。
◇◇◇◇◇◇◇
それから体感10分後くらい、目を覚ました俺は知らない場所に来ていた。
「……あ゛? 俺は知らない人にナイフを刺されたんじゃないのか?」
あたりは鍾乳洞の洞窟みたいになっていた。
洞窟の壁は一面マゼンタみたいな色で、そこから垂れ下がる鍾乳石? 青や緑に見えた。光の反射でそう見えるのだろうか??
とにかく、カラフルに輝く洞窟は、この世のものとは思えないほどに美しかった。
一瞬遅れて、現状どうなっているかに気づく。
「どこなんだ? ここ」
もう一度あたりを見てみると、足元に何かが彫られていることに気が付いた。
円が何個か繋がれて彫られていて、今は土に覆いかぶさっているのか、全貌は良く見えない。
「とりあえずこの円がなにかは置いておいて、外に出てみないと」
洞窟は所々道が枝分かれしており、横道や分岐がたくさん広がっているのようになっていた。
こんなに入り組んでいると、出口はすぐに見つからないと思っていたけど、以外とすぐに見つかった。
さっき目覚めたところからかなり近くて、助かった。
だが、鍾乳洞がこんな浅場にできるなんてことはそうそうないだろう。
しかし、俺は地上に出られたことで浮かれており、洞窟について冷静に考えることはできなかった。
外に出てみると森林が広がっていて、少し離れたところに町のようなものがあった。
森林は広かったが、町に直線で向かうとそんなに距離はなかった。
町では祭りがやっていて、中心には鎧や剣を持っている人たちが炎や水に囲まれている。
町人は活気がついていて、町そのものが揺れているように感じた。
町の活気に何度も飲み込まれそうになった。危ない。
「とりあえず何が起きているかの情報を集めよう」
こういう情報収集は会社でも似たようなことをやってたからすぐに終わるはず!
10分後……
「意外と時間がかかった気がするけど、とりあえず分かったことを纏めよう。
その1、中心にいる人たちは魔王を討伐した勇者。
その2、今その偉業を町で祝福していること。
その3、この世界では一人一つ魔法が使え、魔法の属性は個人差があるけど一人一つであり、固有魔法を持っている人もいる。
その4、この世界には魔法とは別の『ギフト』と呼ばれるスキル? 的なものがあり、ギフトはその人の経験などで生まれる
という状況下において、俺は転生したと」
ということは、転生先が魔王が討伐された後の異世界で、俺はたぶん凡人。
じゃあ、俺、やることなくない?
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