瞬
消えてしまいたいという願望が心の奥底で染まっている。
どんなに楽しい時間を過ごしていても一瞬で消え失せる。
後々に思い出したとしても、どこか断片的で、どこか色褪せて。
もう二度と同じような同じ数値のような喜びは訪れない。
歳を重ねるにつれて、その数値の最大感受性が下がっている。
やがてその楽しい時間が今の自分との比較対象になって、
自分に牙をむき始めてしまう。
この慢性的な辛さ、時に発作が起きる急性的な辛さが、
消えたいなどという贅沢な悩み貧相な悩みをかき消してくれる。
それはこの処方された薬を飲んでいる時と同じことなのかもしれないなどと、
そんなことを思ってしまう。
今、口にしている錠剤は自分のためになっているのだろうか。
今、口にしている錠剤は自分にとってマイナスなのではないか。
飲み続ける理由なんてないんじゃないか。
飲み続けていても、この先はずっと辛いだけ。
抑え込んで抑え込んで社会にとってなるべく無害なままいなくなって欲しい。
そんな願いを込められた薬なのかなとか。
ならさっさと一思いに死ねる方法を教えてくれないだろうかなんて。
これは逃げる行為。
真正面から向き合って生きていない証拠なのだろうか。
この辛い気持ちもまた生きている証拠なのかもしれないのに。
薬で押さえつけて愛想笑いで、死んでくださいというメッセージ。
分からない。分からないと答えが出ない事に頭を勝手に使われる。
はやくとろけてしまえ、脳なんて。
出来れば一瞬で、消え失せて。
跡形もなく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます