モノクローム イン ザ エンド Mono/Chrome in the end
ナギシュータ
魔の香り-1/3
モノは目を覚ました。
まだ陽は出ていない。起床時間という訳でもなければ、何か外で物音がした訳でもない。そもそも、モノは目覚めがすこぶる悪い方だ。しかし、いつもならしつこく纏わりついてくる眠気は、既になかった。
--魔物がいる。
何の気配もしない玄関の方に首を向けながら、モノは自分の感覚がそう告げている事に気付く。仄かに甘い香りがしたように感じたが、確信する前にその感覚は霧散した。考えすぎか、それとも自らのそれと勘違いしただけなのかは分からなかった。
数日ぶりにベッドで横になっていた身体は若干強張っており、伸びをする。窓から覗く、薄暗いような薄明るいような空が、時間の感覚を変に狂わせる。しかしモノにはあまり興味のない事で、今が何時であろうと関係なかった。
上体を起こしながらブランケットを除け、首元まで伸びた髪の毛を手ぐしで雑に梳かしながらベッドから降りるその身体は、全身の素肌を晒している。
天井から吊り下げられたランタンを撫でると共に暖色の灯りが生じ、部屋を仄かに照らす。モノの目元や口元で、幾つかのピアスが光を照り返した。
木の机に置かれた本の山や小道具や瓶の数々は、一見すると散らかっているようにしか見えない。しかしモノにとっては非常に良く"整頓"されているようで、そこから迷いなく小瓶を一つ掴み、中の鮮やかな液体を、すい、と飲み干す。
程なくして、肉が伸び骨が蠢く音が部屋を這った。
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