「殴りにいったアスカが帰ってこない」

今から一緒に、これから一緒にいこうか

　それは治上が異国に留学していた時に聞いた話だった。

　夕暮れ時、街は静まり返っていた。霧が低く立ち込め、街灯の明かりが曖昧な光を投げかけていた。街角の古びたアパートメントに住むアスカは、友人たちとの夜の飲み会に出かけた。週が明けた月曜日、彼女は大学に来なかった。

　友人たちは心配し、彼女の部屋まで行ったが、ドアは施錠されていた。彼らは騒ぎを避けるため、警察に連絡することを避けた。代わりに、彼らはアスカの消息を探すことにした。

　翌日、彼女の部屋は未だに施錠されたままだった。アスカの恋人に頼んで、合鍵で彼女の部屋に入ると、友人たちは彼女の日記を見つけた。その中には最後の記述があった。アスカは「あの女まじでむかつく。いまから、殴りにいこう」と綴っていた。

　彼らは彼女の行方を追うため、夜の街へと足を運んだ。霧が彼らの視界を遮り、不気味な気配が辺りに漂っていた。アスカが行った場所を追うと、ある古い教会にたどり着いた。

　教会の門は錆びついており、奥深くまで続く墓石が薄暗い光に照らされていた。友人たちは不安を感じながらも、アスカを探し始めた。すると、遠くで弱い呻き声が聞こえた。

　教会を進むにつれ、彼らは恐ろしい光景に遭遇した。墓の周りに立ち並ぶ影が、何かを探しているように見えた。そして、その中にアスカがいるのを見つけた瞬間、彼女は彼らを見据え、凍りつくような笑みを浮かべていた。

　友人たちは彼女を連れ戻そうとしましたが、彼女の目が異様な輝きを放っていたことを感じました。その時、友人たちの中の一人がゆっくりと言いました。

「アスカ、もう大丈夫？何が起きているの？」

　友人たちの声にもかかわらず、アスカは不気味な声で返答しました。

「今から一緒にこれから一緒に逝こうか？」

　その言葉に友人たちは困惑し、彼女が何を言っているのか理解できませんでした。友人たちが彼女を連れ戻そうとしたものの、アスカは何者かに操られているようでした。そして彼女たち自身も、墓地の闇に引き込まれていくような恐怖を感じました。

　やがて彼らは気づいた。アスカはもう元の彼女ではないことを。彼女を連れ戻すことはできないことを。そして、彼ら自身も墓地の闇に取り込まれていくのを感じた。

　その夜以降、アスカと友人たちは街から消えた。彼らの行方は誰にもわからないまま、街の噂として囁かれるだけだった。霧の中に失われた彼らの存在は、街の人々にとって未知の恐怖の源となった。

　そして、霧の夜に、なぞの叫び声が聞こえるという。

「Yahaaaaaaa、Yahaaaaaaa、Yahaaaa、Yahaaaa、Yahaaaa！！！！」

　それがだれの叫び声か、誰もわからない。