第6話 弟家族

「そういや健二と実香みかちゃん、と彼女さん? はいつ来るの?」

 姪っ子の名前を口にするのも久しぶりだ。

 母は壁の時計を見る。


「そろそろかね」

「先に来てると思ってた」

 弟の健二は隣の市に住んでいる。


「彼女さんが夜勤のある仕事しとるけぇ、仮眠とってから来るたい」

「ふうん。

 ……そういえば、今年は結婚しろとか言わないんだね」

「健二が2回目の式をあげるからもうよか」

 お前には期待しないと言わんばかりである。それはそれで傷つく。


「おや、噂をすれば」

 外から車の音が聞こえた。

 健二たちだった。



「おじいちゃん、おばあちゃん、あけましておめでとうございます!」

「はい、実香ちゃん、おめでとうございます」

「元気がいいねぇー」

 しっかり挨拶をした姪っ子は、何かを期待するかのように母にきらきらした目を向けた。孫の期待に祖母は応える。


「忘れんうちにやっちょくね。はい、お年玉」

「ありがとうおばあちゃん!」

 微笑ましい光景だ。しかし、それにしても。


「実香ちゃん、だよね?」

「そうだよ、健一おじさん、お久しぶりです」

「大きくなって……」


 驚きのあまり、月並みな表現をしてしまう。

 前に会った時は、きゃーきゃー走り回る幼児だった。それが、手足が伸びてすっかり「少女」になっている。若さがまぶしい。

 

「おーい実香、自分の荷物くらい持ってくれよ」

 ガタイのいい男が歩いてくる。健二だ。

 その横にいる人を見て、心臓が止まりそうになった。

「……あ」

「お義兄さん初めまして!

 健二さんとお付き合いしています、鳴瀬彩なるせあやと言います!」


 わざとデカい声で僕の言葉をさえぎったのは、今朝夢に出てきた元カノの彩だった。

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