第11話 同窓会?

 同窓会当日、仕事が押してしまい、私は遅れて到着した。

 予約席に案内されて立ちつくす。


「……なんで、千早君だけなの?」


 彼は申し訳なさそうに頭をかいた。

「すみません、皆都合が悪くなって」

「えぇー、そんなことある?」


「風邪とか、バイト入ったとか、感染を気にする家族から止められたとか、まあ色々……」

「そう……かぁ」

「すみません」

「あっ、千早君を責めてるわけじゃなくて」

 そこで言葉が止まってしまう。

 私はとりあえず席に着いた。


 二人きり。はたから見たらやっぱりデートだ、と思う。


「先生今日可愛いですね」

「かっ、かわ……」

 ドキッとしたけど、こほん、と咳をする。


「その、外で先生って言うのやめて」

「どうしてです?」

「どこで誰が聞いているかわからないもの」


 傷ついたかな、と思いきや「うーん」と考えて、

「じゃあ……奈津なつさん?

 それとも奈津、って呼び捨てとか」

 彼は予想外の台詞を返してきた。


「え……どっちにしろ下の名前なの?

 桜井さんじゃダメ?」

「先生の下の名前って可愛いですよね」

「だから先生って呼ばないでって……もう、奈津さんでいいよ」 

 好みの顔でそんなこと言うなんて、ずるい。



「奈津さん、何飲みます?」

「奈津さん、メインはパスタとピザ、どっちにします?」

 彼はやたら私の名前を呼ぶし、料理は美味しくて。

 私が酔っぱらうのに時間はかからなかった。

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