第44話 迷いの森
気合いの入っていたマリクを筆頭とする捜索チームだったが、目に見えて士気は下がっている。
森の隅から隅まで探そうと思っても、探すことが出来ない。真っ直ぐに進んでいるはずなのに、元の場所へと戻されてしまう無限ループ。
「絶対、この先なんすよ。それは分かってるに、先に進めないんすよっ」
ダンジョンの領域内にあれば、簡単にマップを見ることが出来る。地形の起伏や地下の空間でさえも分かってしまうのにマリクがモニターに映す地図には、ダンジョンの領域内であるにも関わらず、黒く何も表示のされていない場所がある。
「空からは試したのか?太陽の位置を目印にすれば、迷うことなんてないだろ」
エルフの住む森には、迷いの森と呼ばれる場所がある。トレントやドライアドといった森の精霊達が、来るものを惑わし行く手を阻む。しかし、大空からの侵入であれば、森の精霊達の影響は受けない。
「それも、無理なんすよ。どこを通っても、元の場所に戻されるんすよ。太陽の位置だって変わってないのに、気付けば元の場所なんすよ」
「シーマ、原因は特定出来たか?」
「精霊やエルフの仕業じゃないと思う……」
ヒケンの森にはエルフも精霊も姿を見せたことがない。ブラックアウトを起こしたダンジョンのある森は、禁忌の森として立ち入りが制限されていたし、逃げ出しこそすれども住み着く者は考えられない。
「何か思い当たることがあるんだろ、遠慮せずに言ってみろよ」
「確証はないよ、ボクのただの勘だからね」
「ああ、何でもイイ。少しでも可能性があるなら言ってくれ」
「マジックアイテムだよ。ダンジョンで使ってる転移トラップのね」
地上もダンジョンの一部であるし、ダンジョン内で使っているマジックアイテムは問題なく使える。ただ、ダンジョンは地下という固定観念から抜け出せないでいた。
「それなら、鑑定眼スキルでマジックアイテムのある場所を特定出来るだろ」
「それが、ダメなんだよ。マジックアイテムは見当たらない」
「それじゃ、マジックアイテムの可能性は低いだろ」
「違うよ、ボク達の知っているマジックアイテムよりも、遥かに強力なんだよ。だから、ボク達じゃ見つけれないんだ」
可能性としては、マジックアイテムに鑑定眼スキルを阻害する効果があるのか、効果範囲が広いかの2つ。しかし、阻害効果があるだけであれば、少なからず妨害を感じ取れる。だから、可能性が高いのは、効果範囲がとてつもなく広い。ましてや、ダンジョン内になれば、勝手に魔力が補充される。
「分かった。それなら魔力消費を見れば答えが出るだろ」
黒子天使を総動員して迷いの森を囲むと、一斉に侵入を試みる。
「ほら、ここを見てみろ。魔力消費が増えている」
「間違いないね。転移トラップのマジックアイテムだよ。ボク達の見える場所には、マジックアイテムも無さそうだけどね」
「マジックアイテムと分かったなら、やり方はある。そうだよな、ザキさん」
初めのダンジョンに居たザキーサなら、転移トラップを知っているはず。俺達のダンジョンで使っている転移トラップとは比べ物にならないほどの、無駄に高性能のマジックアイテムにザキーサが関わっていないわけがない。
「うむっ、簡単な方法はな、この一帯を吹き飛ばすだけの魔法をくれてやればイイ」
「それはダメだろ、絶対に。それに、そんな魔法は誰も使えない」
「余には簡単なことよ」
「ダメだ、地上が大騒ぎになる。俺達は黒子天使だぞ」
「……」
ザキーサは黙って何も言わないが、結界を突破する方法は1つじゃない。
「簡単じゃない方法もあるんだろ」
「気は進まぬがの、余とブランシュが行けば、彼奴の方から出てくるじゃろ」
「ブランシュか……」
熾天使ブランシュの存在は、地上の人々には誰も知られていない。存在が明らかになれば、間違いなく人気になり人が集まる。ダンジョンにとって悪いことではないが、ラーミウの陰謀を考えるとブランシュの存在は秘匿したい。
「1つ聞くが、ブランシュの力に匹敵する黒子天使はおるのかの?」
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