イエロー・アーモンド・アイ連続殺猫事件

DITinoue(上楽竜文)

プロローグ

プロローグ

「ごがらすさま、って何よ? 聞いたことない言葉なんだけど」

「しーっ、しーっ! ペットショップのスタッフがそんなこと言ったらダメでしょあんた。バカなの?」

「バカなの? って言っても、そんな知らないことなんだからさ」

「だから、そんなね、ごがらすさまっていうワードを出したら店が潰れちゃうよ!」

「え、そんな……どういうやつなの?」

「それは言っちゃダメだってだから。都市伝説みたいなもんだからもう」

「都市伝説なら信じなくても……あ、お客さん。はい、何をお探しでしょうか? ウサギですか? それなら向こうの売り場へ……さっき何を話してたか? それはちょっと、ね、ね、ね……」



◆◇◆



「シャーッ! シャーッ!」

「静かにしてくれ」

 人影は、小動物の柔らかい腹を勢いよく殴り、首根っこをつかんでロッカーの中に突っ込んだ。

「ヴヴ……」

 もう一つの大きな影は怪しい光を放ちながら、ヒョイとロッカーに入っていった。

「ンミャーン!!」

 これ以上音が漏れないようにと思ったのか、人影はバタン、とロッカーのドアを閉めた。

 ――と、白い娑婆の光が差してくる。

「……そこにいるのは誰だ?」

「……チッ」

 人影は舌を鳴らし、ギリッと爪を噛んだ。

「おい、何をしているんだ。おい」

 人影はワナワナと身体を震わせ、立ち尽くしていたが、意を決したのか勢いよく扉を開けた。

 二つの影が勢いよく飛び出してくる。

「そうか、やっぱりそんなことをしようとしていたのか、お前は……いくら恨みがあるとしてもそれは止めろ。お前のせいで様々な人間が悪者扱いされてるんだぞ。こんな愚かなことは……なんだっ?」

 大きめの動物の影は、一度のジャンプで百六十センチ以上の高さに達し、そして大きく口を開いた。

 わずかに覗く光に反射して、ギラリと冷たい光沢が見える。

「ぐっ、クソッ、助け……」

 と、人影は木の幹のようなたくましい左腕で男のみぞおちを痛打し、その勢いのまま右腕で頭をがしっと鷲掴みにした。

 大きめの動物の影も首を噛み続け、男はしばらく悶え声を出していたが、やがてバッタリと床に倒れ伏した。

 ふぅ、ふぅ、と人影は肩で息をし続ける。左肩をさすりながら、小動物をくわえている大きめの動物にハンドサインで指示を出す。

 動物はハンドサインに従い、くわえていたものをブン、と強く首を振って地面に叩き付け、そのまま軽やかな足取りで空いている裏口の窓から、夜闇へとその体を溶かしていった。

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