訳あって、眠らぬ陛下の抱き枕になりました 羊姫は夢の中でも溺愛される

高見 雛/ビーズログ文庫

プロローグ

  

 昔々のお話。

 レアリゼ王国に、たいそう美しいおひめ様がおりました。

 お姫様はかしこく、気立ても良かったので、守り神様は自分の力をあたえることに決めました。

ねむりといやしの加護」を得たお姫様は、人々の夢にもぐって心と身体からだを癒すことに力を使いました。

 ところがある日、お姫様は気付いたのです。

 加護の力を悪用すれば、人の心を意のままにあやつれるということに。

 お姫様は親兄弟や使用人の心を操り、国を思い通りに動かすことにしました。

 国で一番美しい青年を婿むこむかえ、レアリゼ王国の女王様になりました。

 すべてを手に入れて自分勝手にう女王様に、ある日しんばつが下りました。

 守り神様は女王様の振る舞いに心を痛め、加護の力を取り上げてしまいました。

 それまで心を操られていた夫が目を覚まし、女王様をしょけいしました。


 あやまちをおかした末に命を落としたわいそうな女王様は、「ぼうぎゃくの女王」と後の世にかた

れました。

 守り神様が加護の力を人の子に分け与えることはなくなりました。

 それから百年の月日がちました。

 王様とおきさき様の間に、三人目のお姫様が生まれました。

 お姫様はとてもわいらしく、だれよりも清らかな心を持っていたので、守り神様は百年ぶりに加護の力を分け与えることにしました。

 お姫様が四歳になったころ、「暴虐の女王」と同じ力を与えられたと知った王様は、同じ過ちを犯さないようにと、お姫様を小さなきゅうへと閉じ込めてしまいました。

 お姫様は花と緑に囲まれた美しい離宮で、十八歳になるまで外の世界を知らずに育ちま

した。

 温室のバラのようにれんはかなげなお姫様は、人より少しだけこう心がおうせいでした。

 王様の目をぬすんではお城をしていたのです。

 守り神様は今日もお姫様を見守っています。

 お姫様は過ちを犯すことなく、秘めた力を正しく使うことができるのでしょうか。


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