第58話 強化訓練指導?!
そうして、その日はやってきた。
目の前には、なんとも言語化に難ある人たちが立っていた。
「なんだ、揃ってねぇじゃねぇか。
他の奴らはどうした、
「ごっ、ごめんなさいっ!止めたんですけどっ、えっとっそのっですね……」
イラついているカイトを前に、
どう見てもロリータのようなふわふわメルヘンな服装に、色白でクリッとした目の可愛らしい顔、ボブ巻き髪の少女はどこからどう見てもまるでフランス人形だ。
そしてメルヘンチックな可愛いテディベアを抱えている。
「皆さん東京着いた途端、バラバラと四方八方に散らばっちゃってっ……」
「な……なんだと?」
「もーーーーっ!私だって原宿行きたいのにぃっ!!酷くないですかぁ?!見たいお洋服店がいっぱいあるんですぅう〜っ!でも私はちゃんと来て、ーーー」
突然大声を出し悔しがる遥。
その隣で、先程からぺろぺろキャンディを舐めながらポケ〜としていた
彼女は身長135センチの一見すると子供のように小さいのだが実年齢は26歳だ。
「でもぉ大丈夫だよお。一応さっきこっちで見つけた動物たちにみんなの跡つけさせてるんだぁ。だから心配いらな」
「全員がどこで何してるか今すぐ言え!」
キレ気味のカイトの言葉に、ぽわ〜んとした表情のまま、椛が「ん〜」と短く唸り、視覚共有をしだした。
廿楽椛は、動物と視覚を共有できるだけでなく、思考が読めるエスパーでもある。
各々につけている都内のカラスやネズミなどと視覚を共有しだした。
「ん〜……エメちゃんは今、渋谷109でお買い物中みたい」
「チッ…あっのバカ相変わらず……」
「夏樹くんは今、秋葉原のゲーセンでなんかのゲームに夢中」
「…っざけんなよクソゲーマーが……」
「そんでモトキくんは六本木の美術館で芸術に浸ってるみたい」
「くそ変人が……。で……おい、それで?」
「ほぇ?」
「だから…あいつは。あいつはどうした」
突然トーンを低くして視線を逸らすカイト。
「あいつ……あー、あの人はね!新幹線乗り遅れちゃって、遅れてくるみたい!ゴキブリつけといたからちょっと待って、今視覚を…」
「おい!!今なんつった?!ご、ごゴキブリだと?!」
「ほぇ?うん。」
突然真っ青になって怒り出すカイトが椛の体を揺すり出す。
「てめぇふざけんな!!なんであいつにゃゴキブリなんぞつけてんだ!嫌がらせか?!おちょくってんのかてめぇはっ!」
「わぁああっ!だっ、だって新幹線の中にそれしかいないんだもの!」
「新幹線の中にGがいるなんてそもそもヤベェだろぉがっ!」
「まぁまぁカイトさん落ち着いて。付けてないよりいいじゃないですか」
「バカ言ってんな!なんもつけてねぇ方が何千倍もマシだ!!あ〜〜っ、くそっ」
宥めてくる玲二を睨みつけ、カイトの怒りは呆れになっていた。
「おまたせしましたァァ!皆さんっ!はぁ…はぁっ…」
そこへ、なぜか裸足で走ってきたのは朝比奈アリサ。
彼女は高いヒールを手に持ち、長い髪をかきあげながら息を切らしている。
「おぉ朝比奈ちゃんだ!久しぶりだな!」
愁磨が手を上げると、朝比奈アリサは嬉しそうにその手を握った。
「会いたかったよ愁くん!遅れてごめん!ちょうど都内で収録入っててね。実は数日前から東京いたのぉ〜ハァハァ……」
朝比奈は沖縄の地方アナウンサー兼タレントで、度々東京だけでなく、様々な地へ赴くため、あまり場所が定まっていないエスパーである。
それ故に、一番広範囲に任務を遂行している。
そして膝元まで伸びたその長い髪を使役するスキルがある。
「おい、朝比奈」
「あっ!カイトくん!と!皆さんお久しぶりです!」
「まさかお前んとこの沖縄組もどっかで油売ってんじゃねぇだろうな?!」
「そのことなんだけど……実は沖縄ブラザーズたちは任務が長引いて少し遅れてるのよ。ほら、あの子たち、3人で1人みたいなとこあるじゃない?」
「チッ。ガキ共がいつまでくっついてやがる。ったくどいつもこいつも!」
「……。ねぇ…今日のカイトさんどうしていつにも増してこんなに不機嫌なの?」
朝比奈がこそこそと愁磨に耳打ちすると、後ろからぬっと現れたのは地獄耳の
刈り上げヘアの見るからにガラの悪い893のような、40歳くらいの男。
「そりゃあアレに決まってんだろぉ」
「ん?…アレ?」
「アレだよアレ」
「あぁ〜!アレね!っていうかいつからいたの?!びっくりしたぁ!いっつも気配なく現れるよねぇ。しかも相変わらずの地獄耳…」
「んなことよりなぁ、なんっで突然混合なんちゃらなんかやり出すんだ。俺は多忙なんだ分かるだろ?今日だって雲母に全部丸投げしてきたんだ。これでも俺はなぁ」
「立派なお医者様でしょ、ハイハイ何度も聞いてるよ」
気だるそうに苛立っている薬膳に、気だるそうに風間朧が口を挟んだ。
「おん?朧じゃねぇかぁ。久しぶりだな。お前そろそろ俺の実験台になれよ。妙薬の研究をしてんだ」
「はぁ?何度言ったらわかるのそれ!僕の玲二先輩への愛は純粋で、妙薬なんか採取できるわけないじゃん!」
そんな中、1人の世界に入ってカチャカチャとパソコンを弄っているのは
周りの騒がしさを完全に無視し、何かに集中できていることが凄すぎる。
ガルルルルルラルル
「?!」
突然した獣の音と気配に、数名が扉を開けた。
そこから覗くと、なんと向こうの方からすごい勢いで迫ってくるのは、それはそれは大きな狼だった。
しかも、背には2人の人物が乗っている。
シュタンッと着地し、降りてきたのはボーイッシュなモヒカンヘアの女と、目付き悪めだがなんだか凄いオーラをしている男だった。
「おーっ!来たな!めっちゃくちゃ久しぶりじゃんか!」
そう言ってはしゃぎ始めたのは爽太だった。
どうやら仲が良い様子だ。
「おいおいまたウルフに乗ってきたのかよ。あとで乗らせてよ!」
「まぁ静岡のG市からだから結構近いぜ?だがエネルギー補給しなくちゃなんだ。食っても良い奴ここにいるかぁ?」
物騒なことを言う狼乗りの女、御子柴マモ。
「ふぁあー……うぇ……やっぱウルフに乗って長距離は酔うわ……俺苦手なんだよ乗りもんは」
「何言ってんだよ龍太郎。アンタいつも龍に乗ってんじゃん」
「龍は別なの!あーくそ!酔い止めある奴〜っ!」
龍太郎の手首から、龍のタトゥーがチラリと見える。
「みなさーん!遅れちゃってすみませんねぇ」
「あっ!賢吾くん!もー待ってたんだからあ!」
朝比奈アリサは、同じ沖縄組の明るく優しそうな青年、金盛賢吾に飛びつくように抱きつく。
そのとき、賢吾の胸元から、苦しそうに蛇が出てきた。
ひっついている朝比奈の爆乳の隙間からニョロリと舌を覗かせている。
「あらっ!今日も一緒だったんだミケくん。」
蛇のくせにかなりデレデレとしている。
そして蛇のくせに名前がネコすぎる。
「ところで賢吾くん、あとのブラザーズは?」
「あー、すみません。実は急遽任務が入ってしまって……いつ来られるかわからないんです」
その言葉に、「チッ。あんの野郎……」と龍太郎が呟いた。
そんなよく分からない人たちを前に、志門はまたも不安に襲われていた。
ガゼルにマトモなエスパーがいないことはもう重々承知だったが、まさか大阪のサラマンダーと北海道のホーネット、更には静岡ウリアルに沖縄のレイヴンの面々までおかしな者しかいないのではと思い始めていた。
「はぁ……光が戻ってきたら、きっとビビるだろうなぁー…」
光は今日、また単独任務に出かけている。
今の光は、1人でもかなりのスキルを使役できるようになっていた。
ガゼルの誰もが、今の光には何の心配もしないほど強いエスパーに成長していた。
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