第23話 今日のユミちゃんに大混乱
私はいま
「ユミ。私以外の女の子となにしてんのよ」
「あーっ、ちょっとね。ヒカリこそ誰と一緒にいるの」
「・・・。お互い有罪で無罪よね」
「うわ。浮気だ」
「ユミ。あんたもでしょ。ところでこの子は?」
「一ノ瀬陽葵。可愛いでしょ」
「それを私の前でいうのね。ひどいわ」
「目の前で絶賛浮気中のお前が言うなよ」
なんて会話が聞こえたような気がした
もちろん夢だと思うがユミちゃんとヒカリという名の女性の会話だった。ユミちゃんの声はいつものものてヒカリという名の女性は私の聞いたことがないおっとりとした声だった。
こっ恋人・・・・・?いやいやユミちゃんには彼氏がいるからね。
会話の中身を確かめる気力もなく私の眠りは深まっていく。ほぼ3日連続でまともに寝れていなかったのだ。
じわじわと襲ってくる眠気に身を任せると体が楽になってきた。
どれだけの間、眠ってしまっただろう。
「私は陽葵のことが好き・・・だよ」
ひっ。えぇぇぇぇぇ。
しゅ、好きってなによ!
呟くようなユミちゃんの台詞とともにそっと髪を触られる感覚がした。瞳はまだカフェの明るさに慣れてなくて目がくらむ。ユミちゃんは私の髪からゆっくりと手を離した。
少しばかりか眠ったせいで眠気はなくなっていた。(予想外の寝起きのせいかもね)
そうだユミちゃんとカフェで・・・。
夢だったのか。ほんとに我ながら変な夢を。
ユミちゃんが私に好きだと言うことはありえないので夢だろう。髪に残る触られていた感覚もきっと嘘だ。
「おっ陽葵起きた。おはよー!!」
「ごめんユミちゃん寝ちゃってた」
ユミちゃんは待たせてしまったのにも関わらず不機嫌さを出すことはなかった。
「うんん。気にしないで。陽葵の寝顔も見れたし役得だよ」
役得ってなによ!?
「えっ。ていうか髪触ってた?」
「あーバレちゃった?愛でたくなっちゃってね」
「なんだよ。それ」
どうやら髪を触られた感覚は本当らしい。じゃああの好きという言葉はと思うがそれは絶対に夢だろう。というのもユミちゃんが私に好意を抱くはずがないしあっても友情とやらだろう。
まあユミちゃんには彼氏がいるしね。
「ねぇユミちゃん。最近は彼氏とどう?」
「うーん。まあ普通かな」
「そっか」
ユミちゃんには年上の彼氏がいる。実際私が会ったことはないが同じ学部の先輩らしい。出会い諸々は知らないけど惚気話ならいくらでも聞かされたような気がする。
悩み云々はある程度晴れた。さすがユミちゃんと思ったが新たな火種が増えたのはきのせいだろうか。うん気のせいだよね。
ユミちゃんのコーヒーカップを見ると空になっていた。私が寝ていた間もちゃんと待っていてくれたんだろう。私のカップには半分くらい残っていてこれ以上ユミちゃんを待たせるわけにもいかないので勢いよく飲み干す。
「おまたせ。寝てる間も待っててくれてありがとね」
「気にしなくていいよ。まぁもうちょっと寝てたら唇を奪ってたかもだけど」
「へっ変な冗談やめてよ・・・」
「冗談じゃないって言ったらどうする?」
ユミちゃんはそう言って唇に人差し指を当てると蠱惑的な表情で微笑んだ。最近の自分はこういうのにドキドキしてしまうのだ。結花ちゃんとのお泊り会のときといい・・・。
本気に聞こえるからやめて・・・。
「そんなこと言うなら本当にしちゃうからね」
せめてもの抵抗だ。こんなにからかわれてそのままにしていたら負けを認めたことになっちゃう気がした。そんなことを言ってもユミちゃんはうろたえることなくむしろ喜んでという表情だ。
「へー嬉しいからいいよ。私で良ければ」
引き下がってくれないんかい!
「いや冗談だよ!」
このまま行くとどちらも引き下がれなそうなので潔く負けを認めることにした。それなのにユミちゃんは私に顔を近づけてくる。小さいテーブルのせいで距離はもともと近かったのだ。
「本当にしてもいいんだよ?」
「いやいや。恋人同士がすることでしょ」
「そう?陽葵がいいならいいけど」
「いーやーでーす!!」
「そっかそれなら残念」
絶対残念って思ってないでしょ・・・。ほんとはする気なんて無かったくせによく言うわ。
「っていうかユミちゃん恋人いるでしょ!!」
「大丈夫だよ。そんな綺麗な関係じゃないから」
「どういうことなの!?」
「気にしないで」
なんでもないような、それともなにか言いたそうなそんな表情で笑った。恋仲になってもいろいろあるのだろう。それは私の知らない世界の話だろうけど。
「じゃあそろそろ帰ろっか。陽葵」
「そうだね」
今日はユミちゃんに悩みを聞いてもらったので私の奢りだ。カフェでコーヒーと紅茶一杯ずつ頼んだだけなのでたかが知れてる金額だが奢ったのは実は初めてだ。
外にでると涼しかった店内とは反対に生暖かい風が流れてくる。暑いと思うが家までの辛抱だ。家では朔が冷房をつけていてくれるだろう。
「まさか陽葵が奢ってくれるなんてね」
「それは相談にのってもらったわけだし・・・」
「そっか。意外に陽葵はそういうとこちゃんとしてるからね」
意外にってなんだよ・・・。私はちゃんとしてますよ。普段から。
「当たり前だよ」
「そっかー。そういえば陽葵、来月誕生日だよね?」
そうだ。私の誕生日は8月19日。陽葵という名は言うまでもなく向日葵から来ているので大体想像がつく時期だろう。
「うんそうだけど」
「去年の誕生日プレゼント使ってる?」
「香水は使ってるけど・・・」
ユミちゃんには誕生日プレゼントとして香水と・・結構露出の多いし私のもののサイスよりも遥かに大きい下着を貰ったのだ。それは一回結花ちゃんに貸しただけで使っていない。貰い物を他の人に使わせるというのは非常識な気もするがあれは仕方のないことだったと思う。
「あーもう一つのほうは?」
「つ・・・使ってるわけないでしょ!!というか使えると思って渡してないでしょ!」
「うん。だってあれ私のサイズの下着だし」
「なんで私にそれを渡したの!?」
「教えないよー!」
「いじわる・・・」
相変わらず謎が多いのがユミちゃんだ。基本彼氏優先で私と絡まないのにフラッと現れてまた去っていく。私に良くも悪くもいろいろな影響を与えているのは間違いないはずだ。
「陽葵って鈍感?」
確か同じようなことを結花ちゃんにも言われたんだけど。本当に鈍感なのかな。
結花ちゃんにこの前言われた「陽葵は鈍感です」という発言が頭にフラッシュバックしてくる。あのときは私が踏んでほしくなかった地雷を踏んでしまったことに対して言われたと解釈していた。
「自覚はないけど・・・」
「まあ自覚があったら鈍感じゃないけどね」
「そうかもね」
そう考えると気づかないところで私は結花ちゃんのことを傷つけてしまったのかもしれない。そうでないと温厚な結花ちゃんが感情をむき出しにしたりするはずがない。
「じゃあ私は帰るね。この後。こ・い・び・とが待ってますから」
「あっ。ごめんね」
「うんん。気にしないで」
「じゃあね」
バイバイと手をふると元気に手を振り返してくれる。
そして私たちは別々の家路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます