第122話 新たなる脅威

 なっちゃんは自分のデスクで国語のテストの採点をはじめる。

 俺たちとしては……


 まあ、とりあえずグラスを干し。


「ヒーリング・スペル」


 天王寺さんの大阪スキルで酔いを醒ます。

 そしてなっちゃんの採点の手伝いをする。


 早く終わった方が良いもんな。




 そして


「乾杯」


 飲み直し。


 今度は3つグラスを用意して。

 ブランデーを注ぐ。


 3人。

 ブランデーを口にして、一息つく。


「しかし、もう30年以上経つんですね」


「40年よ」


 なっちゃんは、お酒が入ると時間の経過をよく口にするんだよな。

 見た目通り、あまりお酒に強くない。


 ……だったらブランデーなんて飲ますな?


 うん……ソウカモネ。


「モギトリパーツを潰したときは傑作でしたよね」


 またこの話か。

 お酒入ると、彼女は昔の地獄の大阪で跳梁跋扈していた暗黒組織を潰したときの思い出を話すんだよな。


 いっぱいあったけど、モギトリパーツはその最大手。


 情報管理がしっかりしてて、隙が無い組織だった。


 なので何をしたかというと……


 ちょっとずつ、組織の構成員を洗脳して。

 少しずつその組織を壊していった。


 無論、メインで活躍したのは天王寺さんの「三つ目の膝ザ・サード

 電動こけしを構成員のアヌスにねじ込みまくって洗脳構成員を増やした。

 洗脳構成員を働かせて、さらに洗脳構成員を増やす。

 

 数珠繋ぎ、連鎖に次ぐ連鎖だ。


 ……で、どんどん洗脳構成員を増やして。

 内側から潰していった。


 ……天王寺さんの洗脳支配って、支配に持ち込む方法が楽ではないけど。

 一回やれば天王寺さんが解放の意思を持たない限り解放されないんよな。

 非常に厄介よ。


 そんなこんなで。


 モギトリパーツの指導者の「神魂の芦原」を倒すときは、構成員の8割が天王寺さんの下僕になっていた。

 そのとき芦原には「俺の作り上げたモギトリパーツをよくも完全崩壊させやがったな! 末代まで祟ってやる!」って涙ながらに言われた思い出。


「悪いヤツが必死で作り上げた組織を、私たちの努力で壊してやるの、本当にざまあって感じで」


 ……酔ってんなぁ。顔赤いし、言葉がちょっと荒くなってる。

 まあ、楽しそうで良いけど。


「まぁ、それはそれとして」


 ぐぃ、とブランデーを干すなっちゃん。

 なっちゃんは、お代わりのブランデーを手酌で入れる。


 ……出来上がってるなぁ。


 まあ、いくら酔っても「ヒーリング・スペル」で一発酔い覚めなんだけど。


「谷町さんは尊いですよね」


 なっちゃんが話題転換してはじめた話。


 谷町さん……


 出会ったときは20代の若いお嫁さんを5人娶ってる強者少年だったけど。

 今は孫が28人いるビッグダディ少年……。


 で


 昔は若かった奥さんズも今は還暦なんだけど……

 自分の肉体年齢的にはもはや不釣り合いになってるその5人の妻たちを、谷町さんは変わらず愛し続けているんだよな。

 そこのところ、なっちゃんはいたく感動しているようで。


「前の世界だと、複数奥さん持ってる男性ってクズ扱いでしたけど、あそこまで行くともう認めるしかないですよね」


 ひっく、とか言いながら。


 ……酔い過ぎだ!


 さすがに不味いと思った俺は


「天王寺さん。ヒーリング・スペル」


「了解です。ちょっと酔い過ぎよ!」


 天王寺さんが、俺の要請を聞いて、なっちゃんに酔い覚ましのヒーリング・スペルを掛けた。


 するとみるみる酔いを醒ましてしまうなっちゃん。

 そして


「……取り乱しました。申し訳ありません」


 お約束で、皆に謝罪をしてみせるなっちゃん。

 まあ、簡単に回復できるから別に俺らも謝罪を求めるレベルじゃないから。

 ホント、お約束以上の意味は無いんだよな。


 そんなときだった。

 この部屋に駆け込んでくる者がいたのは


「大変だ!」


 ……彼もまた、変わっていない。

 出会ったときは11才だったけど。

 今は51才。


 見た目は一切変わっていないのだけど。


 谷町将。

 俺たちの仲間の最後の1人……。


 彼は言ったんだ。


「……奴らが来た!」


 厳しい顔で。

 途端に、俺たちも戦う顔になる。


 大阪王のチカラを奪い。

 暗黒組織をほぼ全て叩き潰し。

 地獄の大阪は、日常に学校が存在するような平和な世の中になった。


 だけど……

 大いなる存在は、そんな状況を見逃さなかったみたいだ。


 今のこの「元地獄の大阪」には別の脅威が存在する。

 それが、定期的にこの「元地獄の大阪」を襲撃してくるのだ。


 その者の名は……


 天京都人てんきょうとびと

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