第114話 大阪王の大阪スキル
行動を起こそうとするとき、先に結果に到達して、後からその記憶がついてくる……。
なんか、アレに似てるな。
ほら、どっかのギャングの……。
違うのは、時間を消し飛ばしているか、そうでないか。
そこなのか。
でも、それならさっきのことも説明がつく気がする。
最初のこともだ。
……おそらく
スキル使用者の一存でどうにかなる事象について行動を起こす場合、過程を経ずして先に結果に辿り着かせる技。
この、一存でどうにかなる、ってのがミソだ。
もしそうでないなら、俺たちを殺す行動を起こして、そのまま技を使えばいい。
技を使うたびに、俺たちの誰かが命を落としていく。
それを4回続ければ、大阪王の勝ちだ。
そうしないんだから……できないんだ。
だから、移動までだ。
多分。
そして問題は。
過程をぶっ飛ばして結果に到達した瞬間は「何故そうなったのか」が分からない点だ。
それが理解できるまで、数秒のタイムラグがある。
これ、かなりまずいだろ。
ギャングのアレほどではないにしろ、これだけでも十分マズイ。
気が付いたら、記憶の連続性が無い状況に放り込まれているってことだぞ?
「……大阪人は待つのが嫌いなもんや。何せ、黄色は行け、やしな……」
そう、俺に破壊的な拳を繰り出した大阪王は、飛び退って間合いを離しながら、無表情で独り言のように呟く。
そして
「銃刀法違反武装」
衝撃。
こいつ……木津川さんの大阪スキルを……!
大阪王の手の中に、斬馬刀が出現する。
中国の武器だ。
両手持ち前提の、大振りの青龍刀というのが一番適切な表現。
両手持ち前提だから、柄は長い。
それを両手で振り回し、構える。
「木津川さんの技を何で使えるの……?」
なっちゃんが呆然とした風に言った。
木津川さんの技を引き継いだことは、なっちゃんにとっては木津川さんとの絆だったはずだ。
それに対して大阪王は
「大阪人は情に厚いから友達が多い。そして友達は、苦しいときに力を貸してくれるもんや」
……木津川さんは仏教的な思想を持った人だった。
だから、大阪王に謁見して、大阪王の在り方にある程度の好感を持った可能性は高い。
大いなる存在って、仏教の思想にかなり近いしな。
だから……そういう相手の大阪スキル技を使用することができる技。
そういうことなのか……?
「
谷町さんがデザートイーグルを呼び出した。
そしてすぐさま大阪王に銃口を向け、発砲。
数発の連続発射。
だがその瞬間、大阪王の姿は消え……
次の瞬間、谷町さんの目の前に出現する。
大阪王は斬馬刀を大きく振りかぶっており……
驚愕に見開かれる谷町さんの目。
まずい!
「サーディンランブラスト!」
サーディンランブラストは基本的に非殺傷の技!
誤射はそれほど気にしなくていい!
撃つ以外無い! 谷町さんを救うためには!
俺の突き出した右手から、イワシの輝く奔流が怒涛の流れで大阪王に殺到する!
大阪王はそれをまともに喰らい、吹き飛ばされるが……
大阪王は、地面を転がって吹き飛ばされた後。
普通に、何事も無かったかのように起き上がって来る。
……サングラスの位置だけは直していたが。
そのとき。
ちょうど、記憶が流れ込んでくる。
大阪王に谷町さんは発砲し。
その銃弾は全て大阪王の頭部に命中。
頭を破裂させ、脳みそをぶちまけさせた。
だけど。
その、致命傷としか思えない傷が、ビデオの逆再生のように治ってしまう。
その間、2秒無い。
そのまま大阪王が谷町さんの間合いに踏み込んで来て、斬馬刀を振り上げ
そこから、現実の記憶に繋がる。
……こいつ、頭撃っても死なないのか……?
「頭部破壊が死に繋がらない……?」
谷町さんも遅れて来た過程の記憶を得たのか。
そしてそこから出た、そんな谷町さんの言葉に。
「それは洒落にならんしな。笑えんやろ」
大阪王は、しれっとした調子で返してきた。
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