第84話 俺は太陽の子

★天王寺理香子目線です★



「なんでなの!?」


「流石にそれは言えないよ」


 ……駄目か。

 流れで口を滑らすかと思ってワンチャン挑んだけど。

 駄目だった。悔しい。


 だったらあとはもう、ここから生還してナツミたちと合流することを最優先にしないと。


 さっきから谷町さんが何もしないのは、軽々しく動けないから。

 それは分かってる。


 じっと黙って、相手の出方を見守ってる。


 相手……


 特に、天海が連れて来た禿げ頭の巨漢を。


 ……ピチピチの黒いTシャツを身に付け、下はダボダボ黒ズボンを身に付けている。

 おなかがすごい。

 まさにハート様。


 そして目付きが変。

 なんだろ……揃ってないっていうか。

 ええと……ひょっとしたら悪い言葉かもしれないけど……ロ〇パリ?

 確か正式名称は斜視って言うんだっけ?


 で、さっきからしきりにキャベツを食べていた。

 丸太のキャベツから、葉をむしり取って、1枚ずつムシャムシャと。


 そしてその丸太キャベツ。

 葉をむしるたび、新しい葉が即座に生えてきていた。


 まさに無限キャベツ。

 キャベツを食べながら、そいつは言った。


「キャベツはうめえなぁ」


 ……どんだけキャベツ好きなのよ!?

 アンタは足〇刑事か!


「岡、やっていいぞ。女は一切傷つけるな。けど、樽井のガキの方は殺して良い。アイツも許してくれるだろうし」


「りょーかいっす」


 天海の言葉を受け、キャベツをもぐもぐしながら、進み出てくる巨漢。


「……名前は何なの、あなた」


 時間稼ぎのために、私は訊ねた。


 別に答えは求めて無いけど、その間は考えられる。

 すると


「オカモトタロウ……姓は地形の”岡”、名が”しにがみたろう”と書いて死神モト太郎」

 

 ……何なのその変な名前!?

 親、絶対ふざけて付けたでしょ!?


 そう、脊髄反射でツッコむ。


 私の手持ちが下僕化済のライフルの弾丸が残り数発。

 そして新たに下僕化する行為「三つ目の膝ザ・サード」の使用1回。

 あとは……私だけ無傷でいられる可能性。

 これは……後で私だけ天海の手で殺すからでしょうね。

 だって、私の仲間である谷町さんはここで殺すのに。

 私だけは助けるわけがない。


 串刺しの標的だから、私だけ無傷なんだ。


 ……でも、これは私のカード。

 考慮に入れろ……!


 考える私。

 そんな私の隣で。


 谷町さんが動いた。


 狙撃用だったライフルの銃口を、岡に向け、引き金を引いたんだ。


 パン、という音がした。

 けれど。


 岡は倒れなかった。

 絶対に急所に当たってるはずなのに。


「……無駄だよ。俺、ライダーだし」


 そう、ニヤリと笑って言う。

 最初、理解できなかった。


 岡は続ける。

 ニヤニヤしながら。


「俺の大阪スキルは『太陽の塔』だ。なので『黒い太陽』がある。……つまり……分かるだろ?」


 それを聞き、私は思った。


 私の年齢でそれが分かるのはカタギじゃないと思うけど!

 それはアレよね!? 仮面ライダーBLA●Kってことよね!?

 最悪じゃない! 色々な意味で!


 世紀王の力を得る大阪スキル技……!

 世紀王だったら、銃なんて絶対に通じない。

 だって世紀王だもの。


 武器として通じるのはサタンサーベルだけのはず。

 毒の胞子とか、溶解液なんかは通じそうだけど。


 けど、キングストーンフラッシュがあるからなぁ……!

 苦しくなったら全部あれで解決よ……!


 そこで、私は気づいた。


 ん? キングストーンフラッシュ?


 私は決断する。

 もしかしたらいけるかも。


 そう思ったからだ。


 残りのライフル弾は数発。

 その数発で岡を撃った。


 その……を!


 キングストーンは、ブラックさんの最大の味方であり、最大の弱点なんだ!


 いくらブラックさんでも、キングストーンが埋まっているベルトの位置を狙い撃ちされればダメージをうけるはずだ!

 だって、RXの第1話でもそこを攻撃されて1度死んだじゃない!


 すると


「うおっ!」


 ……怯んだ!

 ビンゴ!


 このチャンスを逃すわけにはいかない!


「谷町さん! 逃げますよ!」


 言って、私は谷町さんの腕を掴んで引っ張った。

 谷町さんはそれにすぐ従ってくれる。


 ……そして2人で屋上から飛び降りた。


 落下しながら、私は手を伸ばし、大阪スキル技「三つ目の膝ザ・サード」を使用した。

 そして、すごいスピードで流れていくビルの壁面に突き刺した。


 アアアアーン!


 悶えたビルが、即座に私たちの救助を開始する。

 壁面からコンクリートの腕が伸び、私たちの落下速度を無理なく緩めようとしてくれる。

 そしてなんとか、ちょっと足が痛いレベルの落下速度で地面に到達した。


 よし!


「谷町さん! ナツミたちと合流しましょう!」


 呼びかけ、駆け出す。


「ああ、行こう!」


 谷町さんもそれに続いてくれた。

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