第70話 何故だ……?

「大阪スキル発動!」


「大阪スキル発動します!」


「大阪スキル発動よ!」


「大阪発動ッ!」


 俺たちは。

 それぞれに思いを抱えながら大阪スキルを発動した。


 どうする……?


 様子を見るために、牽制で……


「サーディンランブラスト!」


 サーディンランブラスト。

 イワシの奔流……!


 木津川さんに魚の群れの形状の、エネルギー波が殺到する。


 それに対し


「違法駐輪の檻」


 木津川さんは、目の前に違法駐輪自転車を出現させ、俺のサーディンランブラストを阻む。

 違法駐輪自転車の列……それは木津川さんの前方を完全に阻む形で展開されていた。


 違法駐輪自転車は手で撤去できる。


 退けるのは時間が掛かる……


 そしてその間に


「ハイエース召喚」


 ハイエースを呼び出した。

 ……これがまずい。


 乗り込まれたら、手を出すのがとても難しくなる。

 おそらく、あのハイエース……強度が普通のハイエースと違うはずだ。


支配の餃子キングギョウザ


 谷町さんが、巨大メイスを餃子から召喚した。

 ロケットランチャーなんかは無いんですかと言いたかったが、多分何か理由があるんだろう。


 谷町さんは駆け出す。


 ハイエースに向かって。


 するとハイエースは


「飲酒運転ブレイク!」


 その叫びに連動して、違法駐輪が消える。


 ハイエースが発進した。

 迫るハイエース。


 立ち向かっていく谷町さん。

 両手持ち巨大メイスを振り上げて。


 そして……


 何故か、ハイエースが停車した。

 だが谷町さんは止まらず、振り上げた巨大メイスをそのままそのハイエースの前面に叩きつける。


 ガシャアアアン、とすごい音がしたが……ハイエースには傷一つつかない。


 谷町さんは何度も巨大メイスを叩きつける。

 だが、全く壊れない。


 これがスト2のボーナスステージなら、もう終わってるよ。

 そんな勢い。


 ……さすがに谷町さんの息が上がる。

 動き過ぎたか……


 メチャメチャ鍛え込んだ人だけど……

 それでも絶対に限界はある。


 すると……


 ゆっくりと、ハイエースが動き出す。

 それにはさすがに谷町さん、バックステップをしてしまった。


 すると……


 またハイエースは停車し……

 そこから木津川さんが降りて来た。


 つかつかつかと。

 谷町さんに向かっていく。


 谷町さんはそんな木津川さんに巨大メイスで殴りかかる。

 その殴打を、すばやく横に跳び、躱す。


 ……55才の老人の動きでは無い気がする。


 そして


 木津川さんは、パンチを谷町さんに繰り出した。


 ……するどいパンチだ。

 何か格闘技をやってたんじゃないのか。

 そんな気がする。


 谷町さんはそれを躱していたけど。

 そこに木津川さんが巨大メイスを掴んで。

 上から抑え込むような態勢をとってきた。

 力任せに抑え込むやり方だ。


 ……まずい。


 谷町さんは……鍛え込んだ結果だろう。

 とても身体能力が高い男性だ。

 だが、それは11才としては、だ。


 本当の彼の筋力はただの超小学生級。

 大人に敵うものじゃない。


 ましてや……


 先ほどの男児野との戦いを思い出す。

 ……木津川さんは、男児野の烏賊の触手を引き千切っていた。

 それだけの身体能力になっているんだ。大阪スキルで。


 ひとたまりもない……


 俺は何の助けにもならないかもしれないけど、助けるために2人の戦いの場に突っ込んでいく。


 だが……


 え……?


 何故か……

 ギリギリギリと。

 じりじり抑え込まれていた。

 谷町さんは。


 どういうことだ……?

 前のときのあのパワフルさを考慮したら、理屈に合わないだろ……?


 何故だ……?

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