第18話 なっちゃんの親友

「ひょっとして知り合いなの?」


 ふたりの様子に、俺は我慢できずに訊いてしまった。

 すると


「ええと、私の生前の高校生時代のお友達の、天王寺理香子てんのうじりかこちゃんです」


 なっちゃんが紹介してくれる。

 あ、そういうこと……


「よろしく。ナツミの友達の理香子です」


 頭を下げてくれた。

 慌てて、俺も下げる。


 ……良かったね、会えて。

 とは言いづらいなぁ。


 ここにいるってことは、現世で死んで地獄に堕ちたってことだもの。


「あ、梅田さんと道楽蟹の肉と甲羅の販売で生計を立てている逢坂健太です。よろしく」


「ああ、そうなんですね。……私の友達をよろしくお願いします」


 また、頭を下げてくれた。




 なっちゃんは昔の知り合いに電撃的な再会を果たした。

 この世界に来る条件を考えると、手放しで喜べないことではあるけれど。


 ……なっちゃんとしては、嬉しいはずなんだよな。

 気持ち的には。


 ……手放しにはもちろん喜べないんだよ?

 それでも。


 定期的に一緒に遊ばせてあげたいな、とは思うんだけどさ。

 なっちゃんの大阪スキルは、戦える他人がいないと使えないし。

 単独なら、無能力者と同じなんだよね。

 だから、この危険な大阪を1人で歩かせるような真似はさせられない。




 夕食の席で、天王寺さんのことが話題にあがったとき。


「リカちゃんはすごい優等生だったんです。学校の成績は1桁台で」


 なっちゃんは誇らしげに、一生懸命に自分の友人のすごさを語った。

 それぐらい嬉しかったんだろう。知ってる人間に出会えたことが。


「皆、リカちゃんのことは一目置いてたんです。そんな女の子なのに、リカちゃんは私のお友達になってくれて……!」


 身振り手振りの交え方がすごい。

 相当嬉しいというか、存在の大きな人間だったんだろうな。

 それが見て取れる。


 ……だから多分……なっちゃんの親友だったんだろうな。


 そう思い、俺はウンウンと頷きながら


(……そんな子が、死んでしまったんだよな)


 そんなことを頭の片隅で考える。

 世の中って、理不尽だ。


 なっちゃんの親友ってことは、性格も良いんだろう、あの子。

 外見良くて、勉強もできて、性格もいい。

 そんな子がなんでこんな地獄に来るんだよ。しかもあんな若いのに。


 ……メチャクチャだ。


「……外回りの仕事も探そうか。天王寺さんと接点が増えた方が嬉しいでしょ?」


 ……腕利きの人間がその戦闘力を売り込む「大阪ハンター」っていう仕事があると。

 前に言ってたよね? 他ならぬキミがさ。


 道楽蟹の仕事とも両立できるかもしれないし。

 探してみよう。


 そんな俺の提案を


「ありがとうございます……そうですね。ケンタさんの大阪スキルを私がサポートすれば、かなりの実力のはずですし」


 なっちゃんは嬉しそうに賛成してくれた。

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