ボーイミーツガール〜池からイケメンマッチョ編〜
川埜榮娜
前編 *家の池にイケメンマッチョが現れました*
私の名前は、
父母は海外で働いていて、弟は東京で大学生をしている。
昨年までは、私も弟と一緒に東京で生活をしていたのだが、父方の祖父母が亡くなり、一人息子だった父は、田舎にある祖父母の家を処分するかどうか悩んでいた。
そこで、田舎暮らしをしたかった私が、その家に住みたいと名乗り出たのだ。
ちなみに私の仕事は、東京であろうが田舎であろうが関係が無いWebライターなのと、亡くなった祖父母がけっこうな遺産を遺してくれたので、両親も反対はしなかった。
そういう事情により、私は大きな一軒家で独り暮らしをしているのである。
とまぁ、そんな話は置いといて……。
私は今、とても困った状態である。いや『困った』では言い表せられない困難というか、困惑というか、混乱というか――――
夕食を食べ終え、お風呂から上がった私は自室がある二階へ上がった。その時、庭の池からバシャンと音がしたのだ。
田舎とはいえ女の独り暮らし、お金をかけにかけた家のセキュリティは万全。
敷地内に人間の侵入者があればわかるようにしていたが、反応は無かったので、間抜けな猫や狸が池に落ちてしまったのか? と思いつつも、ちょっと怖いので、しゃがみながらベランダに出て、コッソリと庭を覗いてみたのだが……
「ここは
突然話しかけられたのだ。
いや、あちらからは見えてないはずだし、そもそも人間が何故うちの庭に居る?
お金をかけたセキュリティーはどうなってるんだ?
とりあえず、侵入してきたくせに『ここは何処か』と問うてきた相手を見る為、ここは二階だし危険は少ないだろうと、その場で立ちあがった。
そして、しっかりと相手の姿を見て固まってしまったのだ。
何故ならその人間は、鎧を
コスプレにしては、立派で年季の入った鎧だし筋肉が凄い。
背も凄く高いし筋肉が凄い。(大事な事なので2回言った)
そう、何はともあれ筋肉が凄い。歴戦の
その
私、今日はお酒飲んでないよな?
…………。
あぁ、やっぱり田舎は星が綺麗だなぁ……。(現実逃避)
「すまないが、ここは何処なのだろうか? 見慣れぬ建物に見慣れぬ出で立ち……私は、
神隠しが
「言葉が通じていないのだろうか? 遠目から見ても可憐な姿といい、もしや
はぁ? 妖精? この人頭大丈夫かっ?!
いや、まてまて、これって普通じゃないよね? この人、異世界人的なあれ? えっラノベ? 召喚系ラノベか?!
「あっ、すみません突然の事に驚いてました。ええと、私は妖精ではなく、れっきとした人間です。そして……それ、コスプレではないんですよね?」
「言葉が通じて良かった。こすぷれ? とは何だろうか?」
ですよね~。ていうか何故ここに異世界人が来た? ていうか本当に異世界人? この人は弟の知り合いで、実はドッキリとか?
とりあえず、周りをキョロキョロ見てみたけど他に人が居そうではない、それにセキュリティーにも引っかかってないし。
「ええと、こちらでは普通に鎧を着ている人が居なくて……そういう格好をコスプレというんです。多分貴方は異世界から来てしまった感じ? かと思います」
「なっ! 異世界っ?!」
そりゃ驚くよねぇ。ってかホント、この人どうやってここに来たんだろ?
とりあえずどうしよ? この知らない
いや、普通に不用心だよね……。
でも、どうみてもこの人、異世界から来ました的な感じで、行くとこなさそうだし……困った。
「それに鎧を着ている人が居ないだと?! どうやってモンスターと戦うのだ?! それに隣国と戦争になったらどうするのだ?!」
うわぁ。モンスターとか隣国と戦争とか、アニメではなく生の人間から聞くと違和感しかないわぁ。ていうかこの人、動くたびにバシャバシャ池の水が跳ねて気が散るうえに、そこ、錦鯉飼ってるんだけど。
「とりあえず池から上がってもらえますか? そこで飼ってる魚が死んでしまいそうですし」
「!! すまない!」
そういって鎧を纏った
ぎゃぁ! 鎧とムキムキの筋肉の重みと滴る水分で庭の土がえらいことに!!
「ちょっ!! ストップです!! 庭が荒れてる!!!」
「ああ、『
鎧の
魔法……だと?
「うーん、やはり顔が見えないと話しにくいな『
魔法を使ったことに驚き、固まっている私の正面に鎧の
うぉっ! でかっ!! ビックリしたっ!!
それなりに広いベランダが、窮屈に思えるほどその男性は大きかった。2m近くありそうだ。
そして、部屋の明かりに照らされた男性の顔が、とっても私好みだったのでダブルで驚いた。
うわぁ、すんごいイケメンさんだぁ。
髪の毛は短く刈り上げてて金髪。瞳は緑色かな? ツリ目で力強い瞳に、スッと通った鼻筋に薄い唇。強面だけど整ってるわぁ。
あと、近くで見るとマジで筋肉すげー。上腕二頭筋がムッキムキだぁ。
別に筋肉が好きなわけじゃないけど、こんなムキムキしてたら、ちょっと触りたくなる人の気持ちがわかるな。
「……その、申し訳ないが、貴女に色々教えてもらいたい……のだが……」
イケメンなお顔とムキムキな腕を見つめすぎたのか、私の正面に立った鎧の男性は、先ほどとは打って変わり、何故か少しどもりながら話してきた。
「私も分からないことだらけですが、とりあえず、ええと……とりあえずここではなんですし、中へ……」
ごく自然に中へ通す発言をしてしまったわ。イケメンにやられた? てか、知らない人を家に入れて大丈夫なのか? いや、何か真面目な騎士様っぽいから大丈夫だよね?
「やはり妖精…………」
何故か真面目な表情でつぶやく鎧の男性。
「いや、人間ですからっっ!」
そして、中へ通したのはいいが、ここは私の寝室。一階へ降りないとお茶も茶菓子もない。
「やはり異世界……なのか。全然違うのだな」
室内を見てそう言った鎧の男性……てか、一応名前を聞いたほうが良いよね。
「えーと、名前がわからないと不便なので、とりあえず自己紹介をしますね。私の名前は
「私はディラン・ローレンスという。28歳だ」
えーと、ディランさんでいいのかな? ローレンスさん? どっちだ? とりあえずディランさんと呼んでみるか?
「ええと、ディランさん? で良いのでしょうか? 因みに私は加藤が
「メグミ嬢と呼ばせてもらおうか?」
嬢呼びキター! 西洋系ラノベっ!!
しかし、実際呼ばれると、慣れないから恥ずかしくてゾワゾワする。
「ええと、嬢……は、いらないですね。こちらの世界では、恵さんとか、恵ちゃんとか、普通に呼び捨てで恵とか、そう呼びます」
ついつい、流れで下の名前で呼ぶ方向で説明してしまった。
「そうなのか……ではメグミと呼ばせてもらおう」
いきなり呼び捨てかーい。まぁ、歳上だしイケボだし、何かドキッとしたから良いけどね。
「では、ディランさん、ここは寝室なので、飲み物等がありませんし、一階へ降りてそこでお話をしましょう」
「ああ、そうなのか、わかった。そして、見知らぬ私を信じてくれてありがとう、メグミ」
家へあげたことによる感謝なのか、笑顔で言葉を発したディランさん。
くぅっ! 強面イケメンの笑顔は危険だっ! ドキッというか、胸がズキュンとしてしまったわっ!!
平常心を保ちながら一階のリビングへ向かう。
それにしても、ディランさん身体がでかいし鎧と剣が重たそうだから、リフォームしてて良かったぁ。昔のままだと床や階段が抜けそうな勢いだし。
祖父母が亡くなる少し前、バリアフリーにする為に家全体をリフォームしていたのだ。なので築年数の割にはとっても綺麗。
「床や壁は綺麗だが、階段や廊下が狭いのだな……こちらではこれが普通なのか?」
ゆっくりと降りてきたディランさんがそう言った。まぁそうだろうね。日本は小柄な人が多いし、海外と比べても狭いから仕方ない。
「鎧や武器等とは無縁の世界なので。でもまぁこれでも広い方なんですよ」
お茶とお菓子を用意しながらそう返事をする。
「まぁそれは置いといて、ディランさんはこちらに来る直前には何をしてたんですか?」
「何故そんな事を聞く?」
先程までの笑顔が消え、怖い表情になるディランさん。えっ? 私、何か地雷踏んだ?
「えぇぇっと、こちらでは異世界転移の物語がよくあって、物語では勇者や聖女が召喚される話が多いので、もしかしたらディランさんの世界で、実はこちらから誰かを召喚するつもりが、逆にディランさんをこちらに送ってしまったとか、そんなパターンかなぁと思って聞いただけなんですけど……」
思わずディランさんから視線を外して、早口でまくしたてるように説明してしまったわ。歴戦の猛者的な人が威圧してきたら怖いっちゅーの!
返事がないので、チラッとディランさんの方を見る。
「これは……何だ? 苦い……まさか毒?」
ディランさんは、お茶を入れた湯呑みを見ながら固まっていた。あっ、しまった緑茶を淹れてしまった。
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