拝啓、過去の自分へ 魔術学園より愛を込めずに

あたあめ

第一章 自分を追いかけて

第0話 プロローグ

記憶喪失とは、一般的にエピソード記憶が抜け落ちる状態だ。

一般常識はあるが自分の名前など覚えてないケースも存在する。

すなわち、経験というものが一切ないのだ。

ある種の躊躇がない、好奇心の塊。

そう言えるかもしれない。



「あの…」


聞き覚えのない声で振り返る。

なるほど、話したとしてもグループワークで数回。

特にこれといって目立った容姿でも功績でもない。

この男から声をかけられるとは、少々驚いた。

確かこの男の名前は


「どうしたのかな?グレイ君」


「っ!俺の名前?!」


「え?」


名前を呼んだだけで驚かれてしまった。

入学当初こそ数知れず、こういった手合いは最近数を減らしてきたと認識していたが。


「俺の名前が分かるのか?」


「それは…同じ学年だからね、把握はしているとも」


「いや俺、記憶喪失みたいなんだけど…」


「は?」



本日二度目の驚きであった。

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