あいぶッ‼︎

青春永遠

プロローグ

 春の午後、桜の下で、緊張で震える僕は、高校の同級生である彼女に勇気を振り絞って告白した。


「君とは、結婚を前提にお付き合いしたいんだ。」


 彼女は一瞬驚いた顔をした後、口元に微笑みを浮かべながら答えた。


「何? 『決闘を前提にど突き合いしたい』だ…と…?」


 僕の心臓は止まりそうだった。"ど、ど突き合い?"


「ええと、そうじゃなくて、結婚を…」


 しかし、彼女はもう笑いをこらえきれない様子で、僕の言葉を遮った。


「あはは、ごめんごめん! 決闘を前提にど突き合いって、それも一つのロマンスだね!」


「ロマンス?」


 僕は言葉の意味を測りかねていた。


 彼女は笑い涙をぬぐいながら言った。


「ただ、青春の一ページにはなるかもよ!」


 そう言って、彼女は僕の頭を小突いた。


 その一撃が、僕の青春の始まりだった。


 その日以降、彼女の冗談は学校中に広まり、みんなが「決闘を前提にど突き合い」というフレーズを使い始めた。


 実際には誰も本当に決闘などしていなかったが、この言葉は学生たちの間で恋愛の新しい表現として受け入れられていく。「告白するなら、まずは決闘だ!」という冗談が本気になり、次第にこの風習が現実のものとなっていった。


 恋の告白は単なる言葉ではなく、決闘という形で表現されるようになる。


 しかし、本当の決闘ではなく、それぞれの得意分野で競い合うことが多かった。


 例えば、料理対決、スポーツの勝負、詩の朗読、絵画のコンテストなど、多種多様だ。


 そして、ここから面白いことが起こり始める。もし決闘で負けたら、それは告白を受け入れるというサインとなった。


 このルールは、徐々に「愛負」と呼ばれるようになり、この街独自の恋愛文化として定着していく。


 何年も経ち、この小さな冗談から始まった文化は、半世紀後の世界においては一般的な恋愛の形となり、僕たちの孫の世代にまで受け継がれていた。


 僕たちの青春の一コマが、こんなにも大きな文化を生み出すとは、あの春の日には想像もしていなかった。

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