ギフト

やべぇよ…やべぇよ…巻き込まれたくねぇよ。前世みたいにのほほ~んと生きて野垂れ死ぬのがいいよぉ~……王族とか貴族とか内政とか意味分かんねぇよ


頭をフル回転させて打開策を考える。転生特典のスキルはチートというより異世界の生活をサポートするスキルだ。バリバリの攻撃性能があるわけでもないし、国家転覆や世界征服できるようなスキルはない。

つまり戦ったら負けてしまう!生まれてから修行すればいいって?むりむりむり!!前世ヒキニートだぞ。そんな努力できないし、しない。

となると逃げる?……魔法スキルで姿を消す?転移して逃げる?

無理だ。魔力が足りない!魔力を上げる方法も分かってるけどそんな半年や1年で劇的に上がるものじゃない。耳が聞こえるから時間間隔は身に付いてるけどそんな時間じゃ無理に決まってる!


「今日も……王妃……」


ぎゃああぁぁぁっっ!!!やぱり俺の母さんは王族だぁ!!!どうしようどうしよう。観念して生まれて努力する?いやだぁあっっっ!!!


そうだ!ギフト!ギフトがあるじゃないか。ギフトは前世の経験で決まる。俺の前世はヒキニートだ!もしかしたらヒキニート向けのナイスなギフトかもしれない。使い方はなんとなく分かる。転生特典のヘルプはスキルが主だ。ギフトのことはほとんど分からない。個人差があるからなぁ、ヘルプを作れなかったんだろう。転生特典で分かるのは大雑把な概要と起動方法、それに名称……


ギフト…[マイルーム]?……自分の部屋に入るギフト……


ダメで元々!!起動だぁぁぁ!!!



~~~~~


「あぁ…!!そんな……!!」


「王妃様!お気を確かに…!!」


この世界は中世ファンタジー、日本の創作物に描かれているような世界観。しかしその世界観の中で描かれていない部分というのが実際にはあった。日本のある世界は大国と小国に分けられ、世界の土地すべてを人が管理しているが、そんなことが出来る世界はほとんどない。転生が決まっていた、この国の王子である転生者が予想した国や王子は言わば大国の王族のイメージだ。この世界には大国と呼ばれるものは無く人間が管理できてる土地など、この大地の1割にも満たない。しかも国の全てが小国で小国同士につながりはなく、そこに住む人々も自分たち以外の人間がいることすら知らない。国を出て放浪の旅に出るような者はいるが大抵死亡する。運よく他の放浪者と出会い国を作る場合もあるが、彼らに文字はないので後世に残せない


そんな現実の中、村といっても差し支えないくらい小さな国の王である転生者の母親になるはずだった彼女。彼女は突如消えてしまった我が子にショックを隠せなかった。お世話係の初老の女性と生まれてくる我が子についてお茶しながら話していたら、急に身体が軽くなってしまったのだ。驚きを隠せないお世話係の女性に促されるまま自分のお腹を確認した王妃。膨らんでいたはずのお腹が元の何もないお腹に戻っていたのだ。この世界は文字も無ければ、医療もない。それ以前に人の人体に関わる知識というのも存在しない、そんな文明でお腹にいるはずの我が子が突然消えてしまったと言うのは恐怖以外の何物でもないのだ


「とにかく、ポーション!ポーションを!!」


だけど、この世界も中世ファンタジーの例に漏れずポーションと言った回復薬は存在していた。消えてしまった王子もそうだが、前例のない事態にこの現象を王妃の病だと誤認してしまっていた

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