悪の秘密研究所を壊滅させたら、実験体の少女に懐かれたんだが……。若き凄腕エージェント・ムラサメはある日突然、1児の父となる。
第63話「ミリアリア、協力してサファイアを止めるぞ。これがオペレーション・エンジェルのラストミッションだ!」
第63話「ミリアリア、協力してサファイアを止めるぞ。これがオペレーション・エンジェルのラストミッションだ!」
「では……どうやって……天使炉の暴走を、止めるんですか……?」
「時間が惜しいから簡潔に説明する。プランってのはこうだ。まずはサファイアの天使炉の暴走エネルギーを、俺の天使炉の力で相殺して抑え込む。そしてその間にサファイアの意識を引き戻す。意識が戻れば、天使炉の暴走は止まるはずだ」
エンドレス・ウォーカーは暴走は止められないと言った。
だが俺はその言葉を額面通りには信じてはいない。
というのも、実は俺も過去に天使炉を暴走させかけたことがあったからだ。
まだアンチ魔法リジェクトを、完全にマスターしきれていなかった頃のこと。
俺は天使炉の暴走で、今のサファイアと同じように意識を失ったことがあった。
その時はすぐにダイゴス長官が、渾身の全力ブッパのボディブローを俺に打ち込み、強制的に俺の意識を覚醒させてくれたおかげで事なきを得た。
あの時のことを今回の状況に当てはめれば、サファイアの意識を引き戻すことができれば、おそらく天使炉の暴走は止められるはずだ。
「そんなことが……できるんですか……?」
「できるさ。俺とミリアリアとサファイアならな。できないはずがない。なぜなら俺たちは家族だからだ」
「それって――」
「手伝ってくれミリアリア。俺だけじゃサファイアの意識を引き戻せないかもしれない。だけどミリアリアがいてくれたら百人力だ。しんどいと思うが、頼めるか?」
身体を動かすのも辛いほどの重傷を負っているミリアリアは本来、安静にさせなければならない。
だが今はミリアリアの手助けが絶対に必要なのだ。
サファイアのママであるミリアリアなくして、このミッションに成功はない!
「愚問ですよ、カケル……。サファイアが苦しんでいるのに、私だけ……ママが寝てなんていられませんから!」
ミリアリアはカッと目を見開くと、力強く言い切った。
「OK。だが無理はするな。為すべきは世界もサファイアも、ミリアリアも、俺も。全員が助かるハッピーエンドただ一つだけだ」
サファイアが助かっても、ミリアリアが死んでは意味がない。
ま、ミリアリアのことだから言わなくても分かっているだろうが――。
「それは無理な相談ですね」
「……え? えっと、あれ……?」
しかし当然肯定されるだろうと思っていたところで、まさかの否定の言葉が返ってきてしまい、俺はなんとも戸惑ってしまう。
そんな俺を見て、ミリアリアはクスリと笑みを浮かべた。
「だって無理を通さずに、サファイアと世界を同時に救うなんてできないでしょうから。だからギリギリまで無理は通します。私は大丈夫です、下ろしてください」
「そういうことな。OK、了解」
俺がお姫様抱っこを止めて、そっと立たせてあげると、
「……っ」
ミリアリアは痛みを堪えるような表情を一瞬だけ見せてから、だけどすぐに凛々しい顔ですっくと立った。
それはまるで勝利をもたらす戦乙女ヴァルキリーのごとし。
本当にミリアリアは頼りになる副官であり、ママだよ。
「ミリアリア、協力してサファイアを止めるぞ。これがオペレーション・エンジェルのラストミッションだ!」
「了解!」
俺はうなずくミリアリアの腰を左手で支えると、右手でサファイアの肩を抱きとめた。
「サファイア、パパだぞ。聞こえるか? 聞こえたら返事をしてくれ」
「ママもいるわよ。ポメ太も一緒よ。だからこっちを向いてくれないかな?」
ミリアリアも俺の腰に手を回しながら、ポメ太を握った左手でサファイアの肩をそっと抱く。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
しかしサファイアは俺たちの声がまったく聞こえていない様子で、さっきミリアリアを吹き飛ばしたのと同じように、暴走する天使炉の力を再び放出した。
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