第44話 家族で楽しく水遊び
「むらさめ! ママ! はやく!」
ははっ、すっかり虜になってしまったようだ。
「俺たちも行くか」
「そうしましょう」
「俺はイルカのフロートを取って来るから、ミリアリアは先にサファイアのところに行っててくれ」
「了解です」
俺は膨らませたばかりのイルカのフロートを取りに戻ると、すぐにサファイアの元に向かう。
すると、
「えいっ!」
サファイアが手のひらで水をすくって、俺に水をかけてきた。
「おっ、こいつ、やったな? ミリアリアママ、サファイアに反撃だ!」
俺はイルカのフロートを抱えていて両手が塞がっていたので、イージスでの任務のように、優秀なる副官ミリアリアに反撃の指示を出す。
しかし、
「えいっ♪」
ミリアリアは海水を手のひらで救うと、あろうことか俺への攻撃を始めた。
しかも顔を狙って。
「ぶふっ! けほっ、こほっ……!」
俺はなすすべなく、海水をもろに顔に受けてしまった。
「カケルパパをヘッドショットで撃破です♪」
ミリアリアが楽しそうに右手の親指をグーと立てた。
「いやいや、撃破ですじゃないから。なんで俺を狙うんだよ?」
「ママとして、可愛い娘のサファイアを攻撃するわけにはいきません。よって標的は必然的にカケルパパになります」
「俺、イルカを持ってて両手が塞がってるんだがな? 無抵抗の相手を攻撃するのはどうなんだ?」
「おやおやカケルパパ? イージスの誇る強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズの隊長ともあろうお方が、そんな入隊したてのひよっこ新兵みたいな言い訳をするんですか?」
「いや、言い訳って──」
「わたしたちは常在戦場のイージス隊員。つまりここも戦場です。戦場でそんな言い訳が通じると言うのでしたら、カケルパパの言葉を聞くのも、やぶさかではありませんが?」
「くっ、なんて完璧で強烈な正論パンチだ……!」
まったくもって言い返せない!
むしろ俺が部下に語って聞かせるべきな内容だ!
「どうやら反論はないようですね。というわけでサファイア、準備はいい?」
「じゅんび、できてる!」
「OK!
「はじめっ!」
ミリアリアとサファイアが海水をすくって俺にかけ始める。
母娘
平和だな。
うん、とても平和でハートフルな家族のワンシーンだよ。
海水がちょっとしょっぱいけど。
しかも目に入ると地味に痛いんだよな。
もちろん魔法でバリアを張れば全て弾き返せるのだが、家族での仲良し水遊びでそんな無粋なことをしたりはしない。
ま、目の痛みはさておき。
サファイアと一緒になって俺に水をかけまくるミリアリアは、妙にはしゃいでいたせいで、いつもの冷静な副官とのギャップがすごくあって、なんとも新鮮に感じた。
普段は見れないミリアリアの素の一面を毎日のように見られるのは、すごく得した気分だった。
その後はサファイアをイルカのフロートに乗せて、フロートごと引っ張ってあげる。
「落ちないようにしっかり捕まってるんだぞ」
「うん! イルカさん、ごー、ごー!」
サファイアを乗せたイルカを引きながら、俺は砂浜近くの浅瀬を縦横無尽に走り回った。
そしてこの頃にはもう既に、サファイアはすっかり海に慣れていて――どころか大好きになってしまったようで、
「ばたばた!」
乗っているだけでは飽き足らなくなったのだろう、俺が引っ張るイルカに掴まりながら、ばた足をしてバシャバシャと水をはね飛ばして、いろんな遊びをやり始める。
「サファイア、上手よ。その調子!」
ミリアリアもサファイアの横にピッタリついて、ばた足を頑張るサファイアを応援する。
「ばたばた! ばたばた!」
俺とミリアリアに見守られながら、サファイアは気持ち良さそうにイルカに掴まりながら、ばた足を続けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます