オペレーション『Cherry Blossom Viewing』(お花見作戦)

第33話 お花見の提案

「今日は天気もいいし、お花見をしないか?」

 朝食の席での俺の一言に、


「する!」

「いいですね」


 サファイアとミリアリアから、すぐさま賛成の声が上がった。


「それで、おはなみは、なに?」

 しかしすぐにサファイアが、俺を見上げながら小首をかしげる。


「あはは、サファイアはお花見が何か知らないのに、するって言ったのか」


「むらさめの、いうことは、せいかいだから」


「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。信頼してくれてありがとな、サファイア」

「うん!」


 分からなくても賛成してくれるほどに、サファイアは本当によく俺に懐いてくれている。


 だから俺はその信頼を裏切らないようにしないとだ。

 なにがなんでも悪の研究者の魔の手からサファイアを守り、捕まえ、平和な世界で暮らさせてやるからな。


「サファイア。お花見って言うのは、桜の花が見ごろなので、お菓子を食べたりジュースを飲みながら、みんなでお花を見るんですよ」


 少し考え込んでしまった俺に代わるように、ミリアリアがお花見の説明をしてくれる。


「おはなは、きれいだから、サファイア、すき! チューリップ! あさ、ひらいて、よる、とじる! はっけん、したよ!」


「おー、難しいことをよく知ってるじゃないか」

「庭の花壇に植わっているチューリップを見て、サファイアが自分で気付いたいんですよ」


「それはすごいな。偉いぞサファイア」

「えへへ」


 俺が頭を撫でてあげると、サファイアが嬉しそうに目を細めた。


「でな。ちょうどイージスの敷地内に、桜の木がたくさんあって、今日は平日だから誰もいないだろうし、家族みんなでお花見がてらお昼ご飯でも食べよう」


「了解です」

「うん!」


 というわけで、今日はお花見をすることにした。


 ミリアリアとサファイアがお昼過ぎまで、サンドイッチを作ったりおにぎりを作ったりと、お弁当の準備をしている間に。

 俺はレジャーシートや飲み物、お菓子を買いに行ったり、敷地の使用許可を申請しにいく。


 途中でダイゴス長官に出くわしたので、お花見をすることを簡単に説明した。

 すると。


「お花見か。いいじゃないか。ニッポンの春の風物詩だからね。こうやって普通の生活を送ることも、サファイアにとってはすべてが新鮮で、そして人生にとって大事なものになることだろう」


「おっしゃる通りです」

 さすがはダイゴス長官、素敵なセリフをさらりと言ってのける。


「でだ。実は私も、今日は予定に空きがあってね。せっかくだからお花見に一緒に参加しようじゃないか――」

「サファイアが怖がるから駄目です」


 俺がノータイムで即答すると、ダイゴス長官が涙目になった。


「……」


「そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでください。ダメなものはダメです。あの子はまだ俺とミリアリア以外に心を開いていません。それはダイゴス長官も、ご理解いただいていますよね?」


「そこをなんとか、ならんかね?」


「無理です。サファイア優先です。現状では、あのね帳をダイゴス長官に見せるようになっただけでも、大きな進歩です。今はそれで我慢してください。では家族が待っていますので、これで」


 俺はダイゴス長官の提案をシャットアウトして話を切り上げると、まだ何か言いたそうな様子なダイゴス長官を見てみぬ振りをして、我が家へと戻った。

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