第31話「きょうから、ポメ太も、かぞくだよ」

 ミリアリアも車通りが多いところでは、ちゃんと安全運転をしてくれた。


 特に何もなくイージス本部敷地内にある我が家に帰りついた俺たちは、リビングに集まってポメ太とピースケ2号を我が家に迎え入れる儀式を行う。


「きょうから、ポメ太も、かぞくだよ」

『はじめまして、こんにちは。ボクは、ポメ太だ、わん。よろしくおねがい、するわん』

「いらっしゃい、ませ。ようこそ、わがやへ!」

『わんわん!』


 サファイアが一人二役でポメ太を演じる。

 口調を変えたり、ポメ太にお辞儀をさせたりと、一生懸命におままごとをする様子がとても可愛らしい。


『初めまして、ピースケ2号です』

「よく来てくれたわね。歓迎するわ」

『ありがとう。歓迎してもらえて嬉しいよ』

「どういたしまして」


 ミリアリアも同じように、一人二役でピースケ2号を演じる。

 こちらはかなり手慣れていた。

 多分だけど、子供の頃に経験があるんだろうな。


「さてと、これで今日からサファイアはお姉さんだ。ポメ太の面倒ちゃんと見るんだぞ」


「サファイアが、おねーさん?」


「そうだぞ。ポメ太が汚れたら濡れタオルで拭いてあげて、時々お日様にあてて日向ぼっこさせてあげるんだ」


「わかった!」


「やり方が分からなかったら、ママが教えてあげるからね」

「うん!」


 こうして我が家に、ポメ太とピースケ2号という新たな家族が加入した。


 その後はみんなでおままごとをして遊んだ。


 サファイアはポメ太が気に入って気に入ってしょうがないみたいで、


「ポメ太、おなか、へった?」

『わんわん! へったよ!』


 晩御飯の用意のためにミリアリアがいなくなったあとも、俺と一緒におままごとを続ける。


「きょうのポメ太の、ごはんは、ハンバーガーだよ!」


 サファイアが、ぬいぐるみと一緒に買ったレストランセットから、ハンバーガーのオモチャを取り出して、プラスチック皿に載せる。


『うれしいわん! パクパクパク』

「おいしい?」


『おいしいわん! もっと、たべたいわん!』

「もっとたべたい、みたいだね。スパゲッティも、あげるね」


『ありがとうわん! いっぱい、たべるわん! パクパクパク』


「ええっと、むらさめ? これは、なんて、なまえ?」

 サファイアが指差したのは――たこ焼きだ。


「これはたこ焼きだな」

「たこやき? どこにタコが、いるの?」


「外からは見えないけど、この中にタコの足を切ったのが入ってるんだよ」

「たこさん、あし、きられる!?」


 サファイアが口を大きく開けて、驚きいっぱいって顔になった。


「人間が生きていくにはさ、他の生き物の命を貰わないといけないんだ。でないと俺たちはお腹がペコペコで死んでしまう。だからご飯を食べる時は感謝して食べないといけないんだ」


「むずかしいけど、なんとなく、わかる。たべるのは、いのち、もらう。だから、たいせつに、たべないと、だめ」


 サファイアが難しい顔をしながらうなずいた。

 サファイアなりに一生懸命、食事について考えたってことがひしひしと伝わってくる。


「そういうことだな。ちゃんと分かってるじゃないか。えらいぞサファイア」

 俺はサファイアの頭を優しく撫でてあげた。


「えへへ、うん!」

 サファイアが嬉しそうに目を細める。


 しかしこのオモチャの食事セット。

 ミリアリアに言われてぬいぐるみと一緒に買ったんだが、買って大正解だったな。


 本当にミリアリアは頼りになるよ。

 オペレーション・エンジェルにミリアリアの力は欠かせない。

 あとで改めて感謝の言葉を伝えておこう。


「ポメ太。たこやき、かんしゃして、たべてね」

『わんわん! かんしゃする、わん! パクパクパク』


 その後も晩ご飯ができるまで、俺はサファイアとおままごとを楽しんだ。

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