第17話
「あんたはこどもつくらないの?」とおばさんが女性に尋ねる。
うわ〜、デリカシーないな。と思いながら無表情で空いた食器を片付ける。
女性は困ったように笑って、私も主人も望んでいなくて…と言っていた。
私は、失礼しますと言って厨房に下がる。
黒い服を着た集団がファミレスで集まるのはよくあること。それについては別になんとも思わないが、デリカシーのない話にはうんざりする。
聞きたくなくてもこんな大声じゃね…耳を塞ぐわけにもいかないし。
さっきまでは違う女性に早く結婚しろ、と言っていた。ターゲットが変わって今度はこどもの話。見る限り彼女たちの親でもなさそうだし、本人達困ってるじゃん…。
自分の仕事を終わらせてしまってとうとう手持ち無沙汰になってしまった。
こどもを産むとか産まないとか、結婚するとかしないとか、人それぞれ選択は違うし、正しいも間違いもない。早いも遅いも関係ない。みんなそれぞれの自分の軸で、それぞれの目的や役割があって生きている。人のことに口出さなければいいのに…と思っていたら、
「あれやこれや言ってごめんね、あんた達がお腹の中にいる頃から知ってるからついつい」
とおばさんが言っていた。おばさんの迎えがきたらしく、ひと足先に帰って行く。
残された彼女たちも帰る支度を始めた。
「まあいろいろ言われたけど、良いように受け取っとこ、ね、口出しちゃうくらいおばさんは私たちを愛してるんだよ!」
「そうだね。感謝しよ。そして後でエーテルコードもカットしとこう。浄化浄化。」
そういえば、良いことも悪いこともどう受け止めるかは自分の責任だってヒーラーさんが言ってたなと思い出した。ふむふむ。この人達、なかなかやるな。さて私も仕事、とレジへ向かった。
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