第12話

「余計なお世話だけど、付き合う人を選ぶことは悪いことじゃないよ、自分をリスペクトすることにもなるんだよ」

八方美人なのは短所だと思わないけどね、ともう一言添えて彼女は先に戻って行った。


自分のことを八方美人だとは思わないけど、周りからはそう見られているんだと思う。特に自分の意見が無いので人に合わせるし、フットワークが軽いから誘われると出かけて行く。実は何も考えていないので当たり障りのないことを話す。良い顔をしたいわけではなく、これが自分の性格なのだと思う。人付き合いを苦に思ったことはない。全くない、けれど。

自分をリスペクトする、なんだかそこが引っかかった。SNSでの「やめたら人生が変わったこと3選」「楽に生きていくために手放すこと」などの投稿には必ずと言っていいほど不必要な人付き合いを辞める、とある。

まあ人付き合いが苦手な人はそうだろうね、としか考えていなかった。


SNSに登録している人のリストを見る。思ったよりたくさん登録していた。

この人は愚痴ばかりだから削除。この人からは都合が悪くなってドタキャンされたけどきちんと謝罪と埋め合わせをしてくれたから保留。この人は…誰だっけ?

いろんな人と関わっていると良いこともあった。お金持ちの人からはきらびやかな世界を見せてもらったし、オシャレな人からはトレンドの情報を教えてもらって刺激的だった。

リストを見ながらその人たちとの出来事を思い出していた。

削除する作業を続けているとふと気付いた。削除した人達って私を大切に丁寧に扱ってくれてなかったのかも…?自分勝手だったり、私を都合よく使っていたり。今まで気にしていなかったけど、削除してしまうとなんだかスッキリしたかも。自分をリスペクトするってこういうこと?このままもっと削除しちゃおう。相手には悪いけれど。

ありがとう、さようなら。また新しく素晴らしい出会いがありますように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る