第2話
サモエドは個体によって差はあるけれど大型に分類される犬種だったから、サムもみるみる大きくなって行った。
毎朝の散歩は兄弟で順番に行くことになっていたけれど、気が付けばなぜか朝は僕ばかりが散歩に行くようになっていた。
サムが一歳になった頃には小学四年生の僕よりも力が強くて、走り回るサムに僕が引きずられながら公園を駆け回っていた。
何度もサムを怒った。怒っても怒ってもサムは僕の速度には合わせてくれず、走りたい方向に急に走り出しては、それを必死に引っ張って止めようとする僕がいた。
ならいっそ僕も走ってやろうと思ったけど、鈍臭い僕は足も遅かったからサムについていけず転んでしまう。
転んだとしてもサムは気にする素振りを見せずに僕を引きずったまま進んでいく。
毎日そんな事を繰り返していたら公園の中で僕とサムはちょっとした有名人になっていて、知らないおじさんやおばさんが「頑張れ」とか「偉い」とか言ってジュースをくれたりした。
まあもちろん、飲んでる余裕なんてなかったから走りながら受け取って、走りながらお礼を言って、それを見ながらおじさん達は嬉しそうに笑っていた。
最悪なのは雨の日だ、想像してみて欲しい。傘を片手に、もう片方の手ではリードを持つ。
そして、駆けずり回る。
何度かさを壊して、何度泥まみれになって帰って来たことか。
言葉が伝われば良いけど、サムに「今日は雨だから歩こうね」なんて言っても意味はない。
そうやって僕たちは毎朝の散歩をしていた。
お父さんの方針で日中は庭にサムを繋いでいた。
庭といっても、人工芝が植えてあるような立派なものではなくて、整理されていない屋根のある物置のような場所だった。
サムはよく庭にあったみかんの木の根元を掘り起こそうと穴を掘ってた。そのせいか毎年何個かは実がなっていたのに、全く実はならなくなってしまった。
小学校から帰ってくると庭に付いていた鉄格子の隙間に顔をねじ込ませて、道路に顔だけを出す。
僕はその光景が大好きで毎日帰ってくると、鉄格子の間から出てくるサムを沢山撫でてから家に入るようにしていた。
近所の人たちがよく勝手に庭に入ってサムにおやつをあげたり、撫でたりしてくれた。沢山の人からサムは愛されてたと思う。
少しおバカだったのかもしれないけれど、誰が来ても尻尾を振って、すぐに懐いて、人見知りを全然しなかった。だからきっと沢山の人が愛してくれたんだと思う。
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