双頭戦記 ―帝国の繁栄を求めて―

ワタボー

フランツ・フェルナルト皇太子

 ——少し肌寒くなった秋の日、公園では子供たちがボールを蹴って遊んでいる。

 そんな中、俺は帝国の図書館をあとにして、店で購入した本をベンチで読んでいた。 どれも軍事研究本、それも外国の本であった。


「あっフランツ・フェルナルト皇太子さまだ!」

「お久しぶりです、皇太子さま!」


 二人の子供が俺に近づいてくる。

 ……フランツ・フェルナルト、それは皇太子である俺の名前だ。

 子供好きというのが知られているせいか、俺を見るたび子供たちが手を振って声をかけてくる。

 普通王族ってものは皆畏まると思うのだが、護衛すら付けずに公園にいるのだから声を掛けられるのも無理はないだろう。


「おお、エンドレとアルビンじゃないか」

「名前覚えてくれたんですか! やったー! 皇太子さまに名前覚えられたー!」

「ははは、自国の国民の名前を俺が忘れるわけがないさ」


 楽しそうに俺は子供と話をする、自国の子供と喋るのは久しぶりだ。

 何故かというと、俺は最近諸外国の軍隊視察で二カ月ほど我が国を留守にしていた。

 するとエンドレは、俺にとある事を聞いてきた。


「皇太子さま、ボクのお父さんは元気ですか?」

「ガスパル大佐のことか? 彼なら俺の下で熱心に働いているよ」


 俺は最近、皇帝陛下から直々に軍の最高司令官に任命されていた。

 ガスパル大佐とは参謀本部に所属してる俺の部下の一人だ。


「だったら、これをお父さんに……」

「これは、腕時計か?」

「はい、お父さん何時も頑張って国の為に働いているから……一生懸命にお金を貯めて買ったんです!」

「……ああ、俺がガスパル大佐に届けておこう。大佐のことだ、感極まって号泣かもな」


 ――良い家族を持ったなガスパル大佐、この子は将来お前みたいな優しい大人になるかもな。


「ほら、俺と話していると日が暮れて遊べなくなるぞ?」

「あ、そうだった! じゃあまたね皇太子さまー!」

「お父さんによろしくお願いしまーす!」


 エンドレとアルビンはボールを持って遊びに戻っていった。

 こんなに温かい国民たちを戦争で死なすわけにはいかない。


 我が二重帝国の軍隊は列強最下位と言っても過言ではない程の酷さだ。

 多民族で構成されている我が国は、言語の統一がされていないのだ。

 更には小銃や大砲は過去の戦争で使われていた旧式のみ、そもそも皇帝陛下が兵器の新調を許可してくださらない。

 ナショナリズムも強まっている今、軍と政府が一番頑張らねばならい時である。 

 

 俺は軍の最高司令官として……、二重帝国軍を改革して列強のなかでも勇ましく、強い軍隊へと変えてやる――。


 



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