【試し読み】満月がこの恋を消したとしても
蒼山皆水
プロローグ
プロローグ
夢の中の私は、公園を歩いていた。
今よりも、少し幼い自分。
中学生くらいだろうか。
手にはリードを持っていて、リードの先には大きな犬が繫つながれている。
犬なんて、一度も飼ったこともないはずなのに。
だけど、この場所は知っている。近所の自然公園だ。
歩いて行ける距離にある、緑に囲まれた場所。大きな川も流れていて、バーベキューをしている人もよく見かける。
散歩やランニングをしている人に紛れて、私は犬の散歩をしていた。
季節は夏。午前九時過ぎで、気温は上がりきる前だけど、それでもかなりの暑さだった。なるべく木陰を通って歩く。リードを握りしめる手に、ギュッと力が入る。
今日も、会えるだろうか。
楽しみなような、少しドキドキしているような、そんな複雑な感情が、たしかに胸の中にあった。
でも、会えるって、誰に……?
そんな疑問の次に感じたのは、とてつもない罪悪感だった。
誰に対してかは、よくわからない。だけど、一つだけはっきりしていることがある。
私の子どもみたいなわがままのせいで、その人の幸せを奪ってしまった。
夜空に浮かぶ満月を眺めながら、私の心は涙を流していた。
どうしようもない自分の愚かさが許せなかった。
まるで、世界の全部が、深い暗闇の中に沈んでいくみたいだった。
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