黒と黒

アレクラルク=ネレイア=CMC

闇が深いがらぶらぶ夫婦

「人殺しの物語を書こうと思うんだけど」

 俺に不満でもあるのか。

「人殺しが幸せになれるとは思えないのよ」

 まあ、幸せになったら「フラグ」だろうな。

「死後の世界ってどうなってるのかしら」

 はあ。

 資料探せばいいのか。

 困った妻だ。

 はあ。ダンテの神曲か。

 はあ。仏教の教えか。

 あれー。

 神道に地獄の概念ないな。

 あ、駄目だ。欠陥宗教だ。神道。

「あらら」

 これ、テーマになるか?

「神主さんって名士なのよ」

 そうか。

 書きづらいか。

 困ったな。

 書くことが多いのか。

 小説の基本は「絞る」だ。

 ふん。

 地獄の概念がない。神道には。

 うーん。

 釈迦の教えって本を買ってみる。

 昔読んだが売ってしまった。

 あー。

 うん。

 神道の地獄が仏教にパクられた。

 この線は薄いと思う。

「どうして?」

 ヤミーって神様知ってるか。

「あら」

 閻魔大王のモデルだ。

「そうだったかしら」

 あー。

 ニアピンのはず。

「まあ、ニアピンなのは認める」

 神道か。

「やっぱり日本人って原始人なのかしら」

 どんどんテーマがぶれて行くな。

 書けそう?

「分かんない」

 大変だな。小説家。

 俺は冒険家だけど。

 最近はスポンサーがつかない。

 嘘だ。

 俺は普通のサラリーマンだ。

 上司にSUGEESUGEE言うだけのお仕事だ。

 20年後が不安で仕方ない。

「うーん。地獄か」

 ああ。

 死後の世界は「ある」と思う。

 お前さ。

 死んでからも俺と一緒になりたい?

「あー」

 何。

「この人生を贋物にはしたくないわね」

 そうか。そうだな。

 俺も同じ気持ちだ。

 お前は屁が臭いけど心は綺麗だよ。

 言わないけどな。

 あー。

 どうしよう。

 地獄を書くとしたら天国も書かないといけないのか。

「ええー?」

 対比技法。

「分かるけどさ」

 いっそミステリにするか。

「トリックなんて思い付かない。私、ミステリ作家嫌いなのよ」

 人間描写が浅いから?

「分かってるぅ」

 まあな。

「さっきムカつくこと考えなかった?」

 気のせいだ。

 こういう所が好きだ。

 どうしような。

 人殺しの物語か。奥が深過ぎる。

 あー。

 物語か。

 書こうと思えば死亡まで。

 更に書こうと思えば死後の世界まで書けるのか。

 いや。

 えー。

 どうなってるんだ。小説家って。

 いや。何を書くのが正解なんだ。ウチの妻。

 あー。

 話のやめ時が分からん。

 うーん。

 あー。

 どうしような。

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