壊れたステータス
「行って! キーちゃん!」
『グア゛ア゛ォン!』
『ギルロギィ!』
俺らはあの後、何層か上に登った。
そしてやはり、キーちゃんが強すぎる。
大体のモンスターはキーちゃんによって蹴散らされる。
「ありがとうキーちゃん!」
『ア゛ォォン!』
キーちゃんはそう鳴きながら他のモンスターを倒す。
「こっちだ!」
「はい!」
だがキーちゃん達だけに戦闘を任せるのは何と言うか申し訳ない。
そこで、俺は出来る限りキーちゃんの援護をする事にした。
永劫の剣にいた時にひたすら援護してたからな。
そういうのには慣れてる。
『グオオオ!』
『ヌンジュ!』
エリシア達を有利なポジションまで移動させ、モンスターを倒して貰う。
そして、また上の階層に続く階段を見つけて、登る。
これの繰り返しだ。
「上への階段見つけた! こっち! 早く登って!」
「行きますよキーちゃん!」
『グアアア!』
キーちゃんが俺らを咥えて背中に乗せる。
この方が移動速度も速い。
あと、めっちゃ快適。
超フサフサで、超気持ち良い……。
「ルイド様、次の層に着きましたよ」
「あ、あぁ、ごめん」
もっとフサフサを堪能したかった……。
「よいしょ」
キーちゃんから降りて、辺りを見回す。
「まだ色は変わらないか……」
「そうですね」
「エリシア、今が何層目とか分かる?」
「申し訳ありませんルイド様。分かりません」
「そうかぁー」
まあそうだよなぁ。
エリシアは俺があの階層で召喚しただけだし、これで分かってたら何で分かってるんだ? ってなるし。
「そういえばルイド様」
「ん?」
「レベルは幾つになりましたでしょうか?」
「えーと……」
懐から冒険者カードを取り出して見てみる。
「……ごめんエリシア」
「はい?」
「これ壊れちゃったっぽい」
「見せて貰っても?」
「良いよ」
エリシアに冒険者カードを渡す。
「……ルイド様、この冒険者カードは壊れていません」
「いやいやいやいや、レベルのところ見て!?」
「…………8959……ですね……」
「そう! 8959! 壊れてるじゃん!」
「ルイド様、落ち着いて下さい」
「……すぅー、はぁー」
深呼吸をすると、少し頭がスッキリした。
「……壊れてないって、どういう事?」
「単純な事です。このレベル8959が、今のルイド様のレベルです」
「で、でも俺、あれ以降殆どモンスターを倒してないよ?」
「キーちゃんが倒してくれてますから」
「キーちゃんがモンスターを倒したら、俺のレベルが上がるの?」
「正確には、キーちゃんがモンスターを倒し、キーちゃんのレベルが上がると、まずキーちゃんの召喚主である私のレベルが上がります。そして次に、この私の召喚主様であるルイド様のレベルが上がります」
「つまり、キーちゃんがモンスターを倒すと、俺らにも同じ量の経験値が来るって事?」
「そういう事です」
なるほど。だからそんなにレベルが上がっていたのか。
「何で俺それを知らなかったんだろう?」
「ルイド様は私を召喚する前はゴブリンを召喚していたのでしたよね?」
「ああ」
エリシアには、何故俺がこんなダンジョンの奥底に来る事になったのかを話してある。
「ルイド様がゴブリン達を召喚していた時は、基本ルイド様が
「あぁーそうか」
なんかそう言って貰えて少し気分が軽くなった。
「ありがとう」
「いっ、いえいえ、お礼を言われる程の事では……」
『……グルッ』
キーちゃんがエリシアの背中をグイッと押す。
「ひゃぁっ!? キ、キーちゃん何するんですか!?」
『グア゛ア゛ォン』
なんか、私も混ぜろと言っている様な感じがした。
「ごめんごめんキーちゃん」
『クゥーン』
ワシワシとキーちゃんの
『リジョモ』
「「!」」
前の方から泥の様な見た目のモンスターが現れた。
目は無く、というか顔にあるべき物が何も無い。
のっぺらぼうのようだが、泥で顔に沢山の
正直言って、トラウマになりそうな見た目だ。
「キーちゃん!」
『グガア゛ア゛ア゛!』
キーちゃんが吠え、泥のっぺらぼうに向かって突撃する。
俺も短剣を抜いて構え、辺りを見回す。
他に泥のっぺらぼうは……二体!
「よっ!」
キーちゃんが一体の泥のっぺらぼうを倒すのに合わせて、俺はもう一体の方の泥のっぺらぼうを攻める。
『ビリュゥペ!』
泥のっぺらぼうの首? を斬り裂き、後ろに飛び
「よしっ!」
レベルが8959まで上がってるので、この階層のモンスターとも何とか渡り合えている。
まだ実感が湧かない。つい数時間前までは、俺は間違いなく
いやまあまだ俺より強いモンスターがこの階層にいるかもだし、俺が淘汰する側って言うには少し早い気もするが、どちらにせよ、前より全然マシだ。
『リュグペモォ』
さて、残りはもう一体だけだ。
『グルゥァア゛ア゛ア゛ォン!』
キーちゃんがそう大声で吠え、泥のっぺらぼうに突っ込んで喰い
『ドゥルグルゥプェッェェェェ!』
泥のっぺらぼうはその場で完全に泥になった。
「ふぅ、何とか行けたね」
「流石ですルイド様!」
「ありがとうエリシア」
『ア゛ァォン!』
「うふふ、キーちゃんもよく頑張りました」
『アァァォォォン』
エリシアがキーちゃんを撫で始めた事によって、殺伐としたダンジョン内が少しだけほんわかとした空気になった。
それにしても凄い光景だよな。
絶世の超絶美女が神話級モンスターであるキマイラを撫でてて、そのキマイラもまた顔をスリスリさせてるっていう……。
もうなんて言うか絵画を見てる様だ。
「? ルイド様、どうされました?」
「あぁいや、何か絵画みたいだなぁって」
「えっ、あっ、ありがとうございますルイド様」
『アァォン!』
「キ、キーちゃんもありがとうございますって言ってます」
『アォン!』
「そうかそうかー。よしよしよしよし」
『クゥーン……』
可愛いっ。
「それじゃあそろそろ移動しましょうか」
「うん、そうしよう」
俺らはキーちゃんに乗り、上の階層に続く階段に向けて走り始めたのだった。
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