絶世の超絶美女

「…………んん……」


 あれ? 生きてる?

 俺未到達階層のモンスターに囲まれてたよな?

 ……あっ、天国かここ。

 そうだよな。というかなんか後頭部にもちもちした感覚があるし、恐らく雲の上にでも寝っ転がっているのだろう。

 よし、取り敢えず起き上がって天国を見てみるとす――


「お目覚めになりましたか?」

「!?」


 知らない人の声に俺は思わず飛び起きる。

 ぱっちりと開いた視界にはあのダンジョンの壁があった。

 すぅー、はぁー……もしかして俺死んでない?

 というか今のは誰だ?

 ゆっくりと後ろを振り返る。

 そこには……


「? どうかなされましたか?」


 金髪でサラサラな髪、くっきりした目、長いまつ毛、ふっくらとした唇に、体は完璧に近い……いや、完璧過ぎるボンキュッボンの、所謂いわゆる絶世の超絶美女が正座して俺のことを見上げていた。


「……どちら様で?」


 そう言うと、彼女は立ち上がって履いているロングスカートの汚れをパンパンと払い、端を持ってお辞儀をした。


「自己紹介が遅れました。わたくしは貴方様に召喚された召喚士の、エリシアと申します」


 えっ、今彼女、俺に召喚されたって言った?


「君を……俺が、召喚したの?」

「その通りでございます」


 マジか。


「それで……ルイド様」

「あっ、はい」


 自分が召喚した人な筈なのに、敬語になってしまう。

 あと様付けで呼ばれるのなんか凄いむず痒い!


「私は何をすればよろしいでしょうか?」

「な、何って言われてもなぁ……」


 取り敢えずこのダンジョンから出ることかな。

 ヴァルト達に復讐したいとかいうのは無いし……。


「このダンジョンから出る手伝いをして欲しい」

「かしこまりました」

「あっ、あと、タメ口で良いよ」

「それはいけませんルイド様! 貴方様は私の召喚主様なのですから!」

「え、えぇ……」


 意思は固そうだ……仕方ない、慣れるしかないか。


「それで……えぇーっと……」

「?」


 マズイ! こんな美人と話した事ないから心臓バックバクだ!


「ど、どうやってここから出たら良いと思う?」

「そうですね……やはり、上に行く為の階段を見つけるしか無いんじゃないでしょうか?」

「だよねぇ……」


 すぅー、はぁー、と深呼吸する。

 少しだけ気分が落ち着いて、心臓の鼓動がゆっくりになった。


「よし、取り敢えず、一緒に上に行く階段を探してくれるかい?」

「もちろんです!」


 エリシアが俺の横に付く。

 ……そういえば、俺を囲んでいたあのモンスター達はどこへ行ったんだ?


「なあ、エ、エリシア」

「何でしょうか?」

「俺らを襲っていたモンスターはどうなったんだ?」

「あぁ、それならあの子が全部倒してくれました!」


 ……あの子が全部倒してくれました?

 え、どういう事だ?

 エリシアが指差す方向を見る。


「!?」


 く、暗闇に、何かいる!

 よく目を凝らしてその何かを見ようとする。


『ガルルルルル』

「ご紹介します! のキーちゃんです!」

『グオオオオオオ!』


 キ……キマイラ……?

 きまいら……?

 ……確か、神話級のモンスターじゃなかったか?


『グルルル……クゥーン』

「!?」


 キーちゃんが俺の顔に頰をスリスリとしてくる。

 えっ、何この子可愛いっ!

 じゃなくて、何でエリシアがキマイラなんかを……。

 ……そういえば、紹介するって言ってたよな?


「なあエリシア」

「何でしょうか?」

「このキマイラって……君が召喚した召喚獣だったりする?」

「はい! 私の召喚獣です!」


 やっぱエリシアの召喚獣だったぁぁぁ!

 嘘だろ!? 神話級だぞ!? 世界でも目撃例がほぼ無いモンスターだぞ!?


「何でキマイラなんかを召喚出来るんだ?」

「まあ、私の修行の成果と言ったところですかね……」


 普通、修行したところでキマイラなんて召喚出来ないんだが……。


「す、凄いな……」

「お褒めに預かり光栄です!」


 キーちゃんが更に強く俺に頰を擦り付ける。


「うおっ」

「こらキーちゃん! ルイド様が困ってますよ!」

『クゥーン』


 キ、キマイラ……何だよな……?


「キーちゃんが申し訳ありません」

「いやいや、別に気にしてないよ。むしろ可愛かった」

『ア゛ア゛ォン!』


 キーちゃんは嬉しかったのかぴょんぴょんと跳ねながらそう吠えた。


「ありがとうございますルイド様。それでは、このダンジョンから出ましょうか」

「そ、そうしようか」

『アァオン、アァオン』


 俺に体をこすり付けて来るキーちゃんと、それを少し心配そうに見つめるエリシアと共に、俺らはダンジョンを歩き始めるのだった。

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