死刑囚、異種族学校の職員になる

カマキリキリ

第1章 他種族との絆

第1節 レダクローニ学校と言う所

第1話 就職

「0番!死刑の時間だ!さっさと来い!!」


 黒髪が長く伸び、顔が隠れている。上半身は裸で下の服ももうボロボロ、身体中傷だらけの男は、抵抗することも無く、腕を拘束されながら処刑台へと歩いていく。

 0番とは彼の名前だ。両親に捨てられた0番は育ての親に戦いを仕込まれ、戦うために生きてきた。

 命令に従い、獣人やエルフ、ドワーフといった他種族のものたち、それに同族の人間さえも命令に従い殺してきた。

 なぜ殺さなければいけなかったのか。もちろん殺した方が良いような悪人もいた。でもエルフや他種族だって同じ人間であると思う。

 だからこそ、そんな善良な者たちを殺してきた罰であるとも思った。

 人間は他種族に厳しいものが多い。異物を排除するかのように他の者たちを殲滅、もしくは服従させようとする。そういうところは人間と言うより悪魔だ。人間の闇を見続けていた0番は人間が嫌いだった。

 だが最も嫌いなのは、そんなことを考えつつも生きるために命令に従い続けた自分自身だった。


(人間はこうも醜いのに...でも1番醜いのは俺なのか)


 断頭台の目の前にたち、この場にいるものたちを見た。世紀の大罪人として大勢の観衆の前で死刑が行われる。

 浴びせられ続ける罵倒、中には笑ってる者もいた。このものたちに直接被害が出たとは思えない。だが大罪人見たさ、死刑を見てみたいなんて思ってきたものたちが多い。


(こいつらは、人が死ぬところが見たいのか)


 0番は吐き気を催した。そんな人間に、そしてその人間と同じ種族である自分に。だがそれももう終わる。自分の死という形で。


(そうだな。生まれ変わったら...罪滅ぼしをしよう。人間以外がいいな。他の人達のために...命を助けることをしたい)


 そう考えていると、0番は不思議な光景を目の当たりにする。目の前に自分が現れたのだ。急に現れた自分が断頭台に向かっていく。それに合わせて、観衆たちの声も盛り上がった。


「これは?」

「実はこの場にいる全員に幻覚魔法をかけたんだ。」


 突如、目の前から声とともに黒いモヤのようなものが人の形をなしていく。黒いモヤが晴れるとそこには美しい女性が立っていた。

 長いストレートの黒髪に赤いメッシュが入っている。整った顔で黄金の瞳に吸い込まれそうになる。そしてなんと言っても特徴的なのは頭に生えた2本の角、背中の翼に尻尾だろう。


「...魔族が何の用ですか?」


 特徴からして魔族であることは確定のはず、だがそれよりもなぜ幻覚を見せているのか分からない。


「君の素性は調べたんだ。君...私の学校の職員として働いてくれないか?」


 女性は急な提案をしてきた。正直、信用出来ない。何せこちらは死刑目前の罪人なのだ。そんな罪人を未来ある若者がいる学校に職員として働かせる意味が分からない。


「君が同族を殺していたことも知っている。どうだ罪滅ぼしとしてこの学校で働いても良いとは思わないかい?」


 その言葉で0番の返事は決まったも同然だった。死ぬこと自体が罪滅ぼしとも思ってもいたが、死んでも何も残らない。

 なら騙されてもいいから彼女の提案を受けてみよう。騙されたのなら騙された時、自害すれば問題もないだろう。


「わかりました。とりあえず話は聞きます。」

「そうか!ではここに用は無い!早速学園に向かおう!」


 すると地面に紫色の円形の模様が浮かび上がる。次の瞬間、0番の視界は断頭台から、豪華な建物に変わっていた。


「ようこそ!我が校、レダクローニ学校へ!!私はこの学校の学園長である、サリアだ!まずは中で話そうか!」


 魔族の女性、サリアは嬉しそうに自己紹介をしてから、0番を案内するのだった。

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