僕がキミとセカイに送るストーリー

神崎あやめ

第1話

 好きな人とは、どんな人のことだろうか。その人がいないと悲しい気持ちになったり、逆にいてくれるだけで嬉しい気持ちになったり?僕にはまだ、その気持ちがよくわからない。あ、別に人に興味がないわけじゃないよ?友達はそれなりにいるし、心を許せる親友と呼べるような存在だっている。ただただ、恋愛に疎いだけなんだ、僕は。まぁ、別に恋人が欲しいわけでもないしいいんだけどね。



 セミがうるさく鳴いている8月の初め、僕はバイト先のラーメン屋さんで忙しなく働いていた。


 「おう!紫苑しおん!そのラーメン提供したら休憩入んな!」


 「了解です!」


 僕は高1になってからすぐにここで働き始めてもう1年と少しになり厨房も任され始めていたので、店長にも多少は信頼されてるのかな?と思う。そんなことをぼんやり考えつつ、最後のラーメンを作った僕は店長の指示に従い休憩に入る。


 「紫苑、今日の賄いは何食べる?」


 「もちろん炒飯の大盛りで!」


 「おま、ほんと炒飯好きだなぁ」


 「もちろんラーメンも好きなんですけどね?炒飯が好きだし、何よりこの店の炒飯が好きなんですよね」


 「おう、嬉しいこと言うじゃん?」


 「店長、照れてます?」


 「うるせっ」


 こんな軽口を交わしているここの店長であるあおいさんは、まだ26歳なのにこの人気店である「紺青亭こんじょうてい」の店主をしている女性である。僕がなんだかんだかなり尊敬している人でもある。


 「あ、そうだ紫苑」


 「はい?」


 「明日暇か?」


 「?まぁ、ここもお休みですし暇ですけど…?」


 「ちょっと私に付き合ってくれよ」


 「碧さんのお願いなら付き合いますけど何するんです?」


 「いやさ?うちの妹がライブハウスでライブするらしいんだよ。ちょうど店休みだしさ、紫苑も暇なら一緒に聞きに行かないかなと」


 「ほほう?面白そうですね」


 「だろ?わざわざ紫苑を誘うくらいにはうちの妹は上手いと思うからさ?期待しててくれよ」


 「わかりました!ちなみに、どんな感じの歌歌うんです?」


 「ん?なんかさ、歌ってみた?アニソンとかボカロとかの歌を歌ってるんだよな」


 それを聞いて僕はちょっとだけ表情を変えたけれど、それは碧さんには悟られることはなかったようで少しホッとしている。そんな感じで、明日の予定も決まり炒飯を頬張っていると、まさかのラーメンのスープの仕込み分が終わってしまい夜の営業を休止することになったので、僕はこのまま上がることになった。


 「じゃあ明日は15時にここ集合でよろしくな!」


 「はい!よろしくお願いします!!」


 こうして、碧さんと別れて家に帰った僕には別の顔があるのだった。

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