第3話 続・サイラの救出作戦、決行中
道をはさんで向こう側には、鉄の柵で囲まれた高い塔がそびえている。そのどこかにサイラは閉じ込められているという。
ウルは塔の入口の見える茂みの中に隠れて様子を窺っていた。
入口の扉には人間のオスが二匹。二匹とも長い剣を腰に差しているので、うかつに出ていくと切り殺されてしまう。こちらから襲うなら闇に紛れた方が有利だ。
すでに日は沈み、最後の光を残すばかりになっている。じきに真っ暗な闇が辺りを包み込んでくれるだろう。
ピッピの情報により、片方の人間がクズ王子の手下だとわかっている。いずれサイラを殺しに塔の中に入る時が来る。そいつを追えば、サイラを救出できる。
ウルはその時が来るのを待っているところだ。
ふと遠くからモン太とピッピがギャアギャア騒いでいる声が聞こえてきた。
ウルが空を見上げると、ピッピがモン太をぶら下げて飛んでくるところだった。
「何を騒いでるんだ?」
『ウル、聞いてよ!』
ピッピが舞い降りてきて、放り投げるようにモン太を地面に落とした。モン太はくるりと回転して、スタッときれいに着地する。
『モン太ってば、ズルいんだよ! やること忘れて、サイラにベッタリ引っ付いてるんだよ!』
『いやぁ、久しぶりにサイラに会ったら、ナデナデしてもらいたくなるだろう?』
モン太は悪びれる様子もなく上機嫌だ。
『ボク、もう寝る時間だからね。後は頼むよ』
ピッピは怒ったように言って、返事も待たずに飛び去って行ってしまった。
「で? どうだった?」と、ウルはモン太に聞いてみた。
『相変わらず超いい匂いだった。ペロしてきちゃった』
「ちくしょー!! 抜け駆けしやがって! オレだってペロするのを楽しみにしてるんだぞ! ……いや、違う。オレが聞きたいのはそんなことじゃない! サイラにはちゃんと伝えられたのか?」
『もちろん。ボクが行った時、エサはもうそこにあって、危うく間に合わないところだった。ちょっと手間取ったけど、一緒にいたオスがわかってくれたから大丈夫。言葉が通じないって大変。君がうらやましいよ』
やれやれといったようにモン太はため息をつく。
「一緒にいたオス? まさかクズ野郎じゃないだろうな?」
ウルの眉がピクリと反応してしまう。
『ボクも最初そう思ったんだけど、ピッピが違うって。あれは魔物化した人間だったよ』
「遅かった……。そんな人間、サイラを放っておくわけない。ついにサイラがツガイに……」
クタクタと全身から力が抜けてしまうようだった。
『どうだろう。ベタベタくっついたりはしてなかったけど。なに、サイラがツガイになってたら、あきらめるの?』
「いや、あきらめたりするもんか! どうせ人間のオスなんてみんなクズなんだから、たとえツガイになっていても、オレがサイラを奪う」
『その前にサイラを助けないとね。次の行動まで、ウルはちゃんと隠れていてよ』
「わかってるって。だから、おとなしく隠れているんだろうが」
すべてはモン太が立てた作戦。今のところ順調に進んでいるようだ。
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