第26話


 それでも最初の斬撃を防げたのは、敵の攻撃の接触の間際に、内側から発した外へと広がるエネルギー波を展開したためだ。


 水平に侵入しようとしてくる『斧』の鋒を弾く。


 かざねの量子流域は、すでに別の“モード”へと移行していた。


 敵の斬撃を弾くや否や、その流域の向きを内側へと滑り込ませていた。


 内側。


 エネルギーの粒子が重なり合う、高分子ネットワークの内側へ——



 ドンッ



 イノセントの手のひらに収縮したエネルギー弾が、シールドの側面にぶつかる。


 この時、かざねとイノセントの頭上には、倒壊したビルの塊が重力落下の渦中にあった。


 エネルギー弾の接触と同時に、周囲に伝わる衝撃波が膨れ上がる。


 強烈な波紋がシールド表面上に持ち上がり、激しい空間の歪みが全方向へと伝播する。


 急速に変形するシールド。


 ジジジジと飛び散るスパーク。


 流れる時間の中で、モクモクと煙が立ち上がった。


 ビルが地面へと落下したことによる衝撃。


 その、——崩壊によって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る