第14話
バチッ
バチバチッ
背後へと捻った右腕の先端から、凝縮されたエネルギーが織り込まれていく。
自らの体が地面へと衝突するまでのわずかな距離。
空中へと飛び出してから、ほとんど同時だった。
同時に進行していた。
急速に圧縮される量子エネルギーの“回転軸(角運動量)“が、ある1点に膨張しはじめたのは。
バッ
2体のイノセントから放たれた一撃。
彼らの量子エネルギーには〈色〉が無い。
それは先述した通りだが、それは単に視覚的な状態についてを述べているわけではない。
彼らはイモータルと違い、自らの思考の中に描くイメージを活かして、エネルギーを”出力しない“。
彼らの攻撃手段とその方法は、体外へと拡張した神経ネットワークの回線によって、単位時間あたりのスカラー場を形成する。
彼らにとっては、空間も自らの「体表」の一部だ。
それ故に、かざねへと放った一撃には特定の座標軸と“質点”を伴っていなかった。
不規則な形状と輪郭。
液体でもあり、固体でもあるもの。
量子的な〈色のなさ〉、——それは物質としての原子配列が常に“連動できる流域にある”状態を指す。
『黒の弾道(ブラック・ポイント)』
人々が名付けた「名前」だ。
物質としての形状(単一的な境界面)を持たない彼らのエネルギー流域に、対して。
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