SKYVEHICLE【スカイ・ビークル】1巻

平木明日香

【生活安全捜査課所属】 氷室かざねの日常

第1話




 5秒。





 あと5秒で、敵の広げたアンチフィールド内に呑み込まれる。


 イノセントと呼ばれる怪物。


 “ヤツら”は、世界の「壁」の向こうからやってくる。


 地平線の向こうにある、暗闇に包まれた世界から。



 自由落下の渦中に加速する体。


 敵は廃墟ビルの上へと飛び乗った私を目掛けて、「雷」のエネルギーを展開していた。


 空間に迸る閃光。


 空気中を駆け巡る電流の刃。



 コンクリートが弾け、飛散する。


 足場を失った私は、ビルの外側へと投げ出されるように落下していた。


 敵の数は地上に1、2、3…


 視認できる数だけでも、ゆうに10体以上はいた。


 廃墟ビルの壁から剥き出しになった鉄筋コンクリートが、ガラスの割れた窓枠の向こうに見えた。


 ビルとビルの隙間に映る、夕暮れ時の空。


 陽がだいぶ傾いていた。


 焦げた赤茶色が、地平線の果てを押しつぶすくらいに。



 …さっさと仕事を済ませて会社に帰んないと、上司に怒られるんだよね。


 とくに昨日は、朝から寝坊して依頼現場に間に合わなかった経緯もあるし。

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