アルスの実力
その日は学校が無く、休日だった。レオンは確かめたい事があって、朝食を食べた後、アルスと一緒に家を出た。
レオンに抱っこされたアルスは、外の景色が楽しいらしく、大はしゃぎだった。森から開けた野原に出たレオンはアルスに話しかけた。
「ねぇ、アル。アルはどんな魔法が使えるの?」
「ん?レオン。アルとはオレ様の事か?」
「うん。アルスだと長いからアルって呼ぶね?」
「三文字でもか?!それならレオンの事もレオって呼ぶぞ?!」
「僕はレオンだよ」
「解せぬ!」
「もう、名前の事はいいじゃない。アルは僕と同じ植物魔法なの?」
「・・・。レオンはマイペースじゃのう。おっほん。オレ様はなんたって神じやからな。植物魔法だけではない、どんな魔法でも使えるのじゃ!」
「本当?!すごいね!アル!」
アルスの答えにレオンは驚いて大声をあげた。通常精霊の操る魔法は一つだ。だが精霊の魔力は人間の魔力をはるかににしのぐものだ。レオンの母、サンドラの契約精霊ウィリディスは植物の精霊だ。
ウィリディスは土のエレメントからなる魔法の一つ、あらゆる植物を生み出す事ができ、その植物を自由に操る事ができるのだ。
一つの魔法を自由に操れるだけでもすごいのに、なんとアルスは火、水、風、土のエレメントすべての魔法が使えるという。
レオンの胸は高鳴った。レオンはアルスに魔法を見せてほしいとせがんだ。アルスはまんざらでもなさそうな顔をしてから、もったいぶった仕草で言った。
「まぁ、見せてやってもよいがの。じゃが、ものには順序というものがある。レオンが危機的状況になった時に、オレ様がさっそうと魔法で助けるのがセオリーじゃろう」
レオンは面倒くさいなとは思ったが、アルスに機嫌良く魔法を使ってもらうためには、危険を探さなければなるまい。
レオンはヨチヨチ歩いているアルスを抱き上げて言った。
「アル。僕にしっかり捕まっていてね?」
そう言うと、レオンは自身が唯一使える植物魔法を使った。レオンの足元から植物の芽が生え、その植物はグングン大きくなり、レオンとアルスを乗せたまま、大木へと成長した。
レオンが魔法で育てた大木は、森で一番高くなった。アルスは高い所からの景色に大喜びで言った。
「おお!すごい魔法ではないか!レオン」
「すごくなんかないよ。植物を育てるくらい。僕はこんな魔法じゃなくて、もっと攻撃力のある魔法が良かったよ」
喜ぶアルスとは対照的に、レオンは自嘲気味に笑った。
レオンたち精霊族は、精霊と契約する以前からも、一つの魔法が使えるのだ。その魔法はさまざまで、サンドラは花を咲かせる魔法。ルーカスは風をおこす魔法。ラウラは火を発する魔法が使えた。ちなみにカッタは身体硬化だ。身体中を硬くして、硬いこぶしでレオンの事をよく殴っていた。
レオンの父ロイドは、土魔法の一つ鉱物魔法で鉄製の武器を作る事ができた。レオンは母親に似て、植物を育てる魔法を受け継いだ。レオンは本当の事をいうと、戦闘向きではない植物魔法を少し残念に思っていたのだ。
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