第19話 さぁ、実戦へ!

 私が、2人の魔法使い、フェーリとキュールでチームを組むことになり、モンスターとも問題なく戦える段階になるまで他の騎士がモンスター役となり、チーム練習をすることになった。ちなみに、レクもヘルガにチームを組む提案をされたらしいのだが、断ったらしい。本人曰く、1人の方が動きやすいということなのだ。まぁ、実際1人でも全く問題ないぐらいには強いので文句は言えない。だって、私の数倍、なんなら数十倍は強いのだ。本当にどうしたらあそこまで強くなれたのか気になる。


 で、私達がチーム練習している間にもモンスターが周囲から消えてくれる気配はなく、フェーリやキュールは他の人とチームを組んで、そして、私は一応人を連れていた方がいいということで、2人ほどを連れて見回りをして、実際には私1人で戦っている感じだ。


 というか、ずっと前から思ってたんだけど、なんでこうちまちまとモンスターを向かわせてくるのかね。そっちの方が普通効率良くない?相手は馬鹿なのか?あるいは、本当にただどっからから流れてきたモンスター?たまたま一月近くモンスターが流れて来ただけ?いや、ないな。草原とかの方にも特に変化とかなかったし。たまたまでこんなことが起こるのは考えられない。


 「はぁ、あんたらはいいわね。呑気に私の話聞いてるだけで。少しぐらい魔法の練習とか、剣の素振りぐらいしたら?」


 きゃっきゃっと楽しそうにどこからかかき集めてきた形のいい石を積み重ねて遊んでいる4人を見る。こいつら、中学生にも満たない可能性あるな。


 「ふふん、お姉さん、さては私達を暇人だとおもってるな?」


 「違うわよ。遊ぶのが仕事の6歳児よ」


 「な⁉︎もっと格下だったとは、、、、お姉さん、私達のこと舐めすぎでしょ」


 「今あんたらがしてること、考えてから喋りなさいよ」


 「ふっ、何を言ってるのかな?この石を積み重ねるという作業には、魔法を扱う上で重要な高い集中力と器用さが必要とされるのだ!」


 「あっそ。で、やったら?」


 「ぷぷ。相手にされてないのー」


 「あ?ゲウラス、やるか?おん?」


 そして、いつも通りこの2人が元気に揉み合い始める。流れるように視線をシェリとリウスの方に向ける。


 「で、どうなの?なんかやってないの?」


 「うんとね、実はリンカさんがいない時に、騎士の人たちに相手してもらってるんだ」


 とリウスが言う。相手をしてもらってる、さすがに会話の相手をしてもらってるってことだよな?え?まさかの模擬戦の相手とか?


 「リンカさんが見回りとかでいなくなった後に、魔法のこととか、レイサとかは剣の振り方を教えてもらってますね。分かりやすいし、優しいんです!」


 シェリが嬉しそうに言う。一旦、模擬戦の相手をしてもらってるとかじゃなくてよかったんだけど、


 「ちゃんと家とかで自分だけでやったらしてるの?」


 「うん。僕とシェリは基本的に魔法を教えてもらって、家で魔力をもっと使えるようにしてるよ。レイサとゲウラスはよく素振りしてるね。なんなら、2人の方が真面目というか、熱心?」


 「ちゃんと教えてもらったことを忘れないように復習してます!私は、リンカさんぐらい魔法が使えるようになりたいんですよね。神聖魔法って、扱いが難しいですから」


 なるほどね。この2人は、あの2人よりもだいぶ大人だし、問題ないけど、やっぱりあの2人は自分の好きなことだと真面目だな。というか、魔法を扱うことが職業の人に教わっといて、私が目標なんだ。私なんて、全くもって凄くも何ともないと思うんだけど。


 何気なく視線を、未だワイワイ言い合っている2人の方に向ける。


 (恩もあるし、この4人のこと気に入ってるし、守っていきたいんだよなぁ)


 ぼーっとこの穏やかな空間の時の流れに身を任せる。あ、そう言えば、明日が初めての実戦か。強めのモンスターに見つけることを望む自分と、望まない自分がいるなぁ。







 


「よし、それじゃあ気を引き締めて、チームで頑張って勝つわよ!」


 元気よく2人にむかっていう。もちろん、自分に向かっても言ってるけど。


 「うふふ、そうね。まぁ、でも、最悪ピンチになった時は、リンカが1人でどうにかできるものね」


 「最悪の時にはそうするのです!でも、そうならないように今まで練習しできたので、そんなことにはならないと思うのです!」


 キュールの言葉にうんうんと頷きながら、草原を歩く。綺麗な黄緑色の草は風に揺れて、カサカサと音を立てている。視界良好で、初のチームでの実戦において、非常にいいコンディションだ。


 3人でのんびりと談笑をしながら、ゴブリンやスライムなどのモンスターは狩らないように歩いていく。さすがに、B級のモンスターがいる辺りでは狩らせてもらうが、そうでない限りは、狩すぎて生態系を破壊しないように、また魔力をより多く残しておくという目的のためだ。ちなみに、このような雑魚モンスターを狩すぎると、どこからか強いモンスターがテリトリー確保のために集まってくることがるらいし。そうなれば、一気に強いモンスターが寄ってくるので、今回はそのケースではない、と思われる。


 そんなほのぼのとした空気の中、フェーリの顔に少し緊張が走ると


 「いたわよ。B級、のなかでもそれほど強くない部類ね」


 フェーリに方向を教えてもらい、前衛である私が先頭に立つ。


 どんどん進んでいった先にいたのは、私に実質、負けというのを味わわせた、デルベロだった。実はこの頃、よく前に見かけたモンスターが再び現れるようになってきた。相手側もモンスターのレパートリーをなくしたのだろう。そもそも、色々なモンスターを出す意味がないのだけど。


 「人間と違って横幅があるし、隙を作りやすいわね。とりあえず、あいつの特徴は把握してるから、私が上手く注意をこっちに向けるから、あとは頼んだわよ」


 「うふふ、分かったわ。やる気に満ちてるわね」


 とりあえず具体的にどうするのか、私の考えを伝えようとした時、どうやら相手はそれを待つ余裕がないようで、舌をグンッと伸ばしてくる。それを横に飛んで避けた後、舌はフェーリとキュールの2人の魔力が合わさってできた結界に阻まれる。


 「私があいつの相手してる間に、隙を見て舌の方をどうにかしてね!」


 それだけ言うと、デルベロの方に向けて駆ける。あの時とは違い、舌が一つしかないので攻撃は避けやすい。


 (楽だけど、油断は禁物。それに、これはチームで戦うことが目的。私だけで倒すのはだめ!)


 そして、ただひたすらに左右に大きく動きながら攻撃を避けていると、やがてデルベロは視界に私を捉えられずに、グリュ?と困惑したようにあたりを見渡す。そして、フェーリ達を見るその寸前


 「ファイアランス!」


 「ランドバインド!」


 2つの魔法がデルベロを襲う。キュールの魔法により、四つの足は地面に固定されて、体が一瞬動かなくなり驚いていたデルベロにフェーリの、威力が抑えられた魔法がボンッと音をたてながら直撃する。


 「グリュェャ!」


 キュールの魔法を破ったデルベロが2人の方に舌を伸ばしたところで、


 「炎膜!」


 「ランドバインド!」


 フェーリの魔法によって、舌は炎の膜に突っ込み、その熱さからかウリャギャァ!と叫び声を上げる。そして、引っ込めようとした舌はキュールの魔法で締め付けられる。


 「リンカ、やってしまうのです!」


 キュールがすでにデルベロの方に跳躍していた私に言う。


 「死ね」


 私は、腕に魔力を集めて、そのまま剣を、私の方を見ずに、未だキュールの魔法から抜け出そうとしているデルベロに、振った。バキィン、と音を立てて割れてしまうも、威力は十分だったようで、私が攻撃した部分だけ大きくへこんでいた。


 「ウリャゲャアァァ!」


 「2人ともー!剣が折れて倒せなかったし、あとは任せられる?」


 「なるほど、そういうことなら任せなさい!」


 私は、デルベロの背中を蹴って地面に着地する。デルベロは痛みのせいで、ずっとギャアギャア叫んでいる。そして、


 「ウォータースピア!」


 「ファイアスピア!」


 2人がそれぞれ水と火の槍を作り出し、デルベロの顔の前で勢いよく衝突する。


 ほんの少しの間の後、ドゴォン!と言う爆発音とグギャァァ!と、デルベロの叫び声、そして、立つことすら困難な爆風が襲いかかる。それも徐々に弱まっていき、そこに残ったのは抉られた土地だけだった。


 自分の放った魔法に吹き飛ばされたキュールが、フェーリに支えられながら、やったのです!と元気よく拳を上に突き上げる。


 (ふぅ、初めてのチームでの戦いだったけど上手くいってよかったわ。対戦経験があったのもでかかったわね)


 そして、長生きを吐いて、2人の元に向かって行った。

 


 



 


 


 





 

 

 


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