第3話 吸血鬼の道

彼こと長尾に例の件を話してから、約一週間が経ったある日、自室のインターホンが音を上げる。室内響き渡るその音は部屋中のどこにいても聞こえてくる。


ぼろいアパートのさび付いたドアを開けると目の前にいたのは、長尾だった。


「どうしたよ」


軽い会釈も必要ない間柄だと思っているが、親しき中にも礼儀あり、だが、あいさつをするのは億劫だったのでスリッパを置いておいた。


昨日ゴキブリを叩いてそのままにしてたやつを。


「いや、先週の件でちょいとお話が...」


そのゴマをするような態度に違和感を覚え、長尾の体をチラリと一瞥する。


すると、白いレジ袋が目に入った。


「ん?手土産か?それ」


彼の右手にぶら下がっていたそれを、僕はしゃがみ込み、つんつん突く。


「いや、配信関連的な?」


確かに、突いてみるとお菓子の包装を触っているようなガサガサとした音は聞こえてこず、その代わりにカンカンという固いものを叩く音が聞こえる。


「もうそんなもん持ってきたのか。話が早くて助かるよ」


「しっかしなぁ...タダでこれを貸し出すのはなぁ...」


「...」


僕はジト目で長尾の事を見つめてしまった。

つまり、あれだろう?


「金が欲しいわけね?」


どうせ、収益の何%か要求してくるつもりだろう。


「へへ、さすが旦那。話が早くて助かりますぜ!」


両手を腹の前で擦り合わせる。


いつからコイツは、こんな盗賊の子分みたいになってしまったのだろう...。


「まぁ、でも金なんて配信してみないとわかんないし、とりあえずはタダで貸してやろう」


「ははぁー。恐悦至極に存じます」


いつからか立場が逆転したような気がしたが、きっと気のせいだろう。


とりあえず腰をぺこりと90度折り曲げて、感謝の意を示しておく。


「で?いつからやんの?」


こっちは暇なのでいつからでも構わないが、相手はそうもいかない。


「んー...明日からとか?」


「ん?」


「あ、明日は都合が悪かったか?なら今からとか...」


...あれ、コイツもしかしたら、いやもしかしなくても暇人なのでは?


「早いに越した事はないと思うが...」


マシンガンのように飛び出す言葉を一度静止させるために、口を開く。


「お前って、もしかして暇?」


「うん。暇」


即答だったわ。

なら──


「やろうか」


「いつ?」


主語のない会話ってカッコいいよね。


「今すぐにだ」


「了解。ボス」


アパートの前で小さなお芝居をした所で、ダンジョンに向かう事を決め、準備を始める。




───

〈あとがき〉

今回も読んでくれてありがとうございます!


良かったら☆とか、♡とかレビューとかお願いします

(高評価乞食)


(カクヨムコンの読者選考を突破したいなぁ...誰か評価してくれる人いないかなぁ...チラチラ)












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