炊きたてごはんは悩ましい

ひかり

炊きたてごはんは悩ましい

炊きたてご飯はおいしい。


味噌汁の具を半分くらい食べてから、隣に盛られた白米に手を伸ばす。


よくかむと甘い。


内側に到達すると、ご飯はまだ熱くなっていてふわっと湯気が立つ。


熱々のご飯は止まらない。


そのままご飯を食べる。


半分くらい食べてから、おかずを食べていないことに気づく。


おかずを食べてご飯に戻ってきたら、さぞかしおいしいことだろう。


しかし、おかずを食べている間にご飯が冷めてしまうかもしれない。


そうなってもご飯はおいしいが、やっぱり熱々のうちに食べるのは格別である。


はたと気づく。


ふりかけをかければ、もっとおいしいのではないか?


もちろんである。


例えばのり玉。


のり玉はのせたてが命だ。卵のこっくりした味と白米の瑞々しい甘さが絡み合うと絶品である。


とくにご飯が熱々のばあい、そのやめられないとまらない、は筆舌に尽くしがたい。


のりはパリッとして、緑のわさびっぽい見た目の塩っ辛いやつはじゃりっとする。


例えば混ぜ込みしゃけわかめ。


あれはおにぎりにしてわかめをふやかすことで真価を発揮する。しかし、炊きたての熱々ご飯に載せてまだかたいうちに食べるのも案外、乙なものである。


そのばあい、しゃけとわかめは塩っ辛い。


塩っ辛いものはおいしい。


ご飯のあまみも付け加えたら最強である。


例えば、やさいふりかけ。


あれはすごい。乗せた瞬間にご飯の湯気にのって、ふりかけの香ばしい香りがほわんと漂ってくる。


そうなったら我慢できない。


結局おかずに手をつけないまま、ご飯だけがなくなるという現象が起きてしまう。


結論。ご飯に塩っ辛いものをのせるのはおいしい。


しかしそもそも、台所にふりかけを取りに行くということはご飯を食べる手を止めるということである。


熱々ご飯はとまらない。


わかっている。熱々ご飯をおいしく食べる手立てはたくさんある。


しかしとまらない。


おかずにするかふりかけにするか、それともこのまま食べ続けるか。


炊きたてご飯は悩ましい。

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