BEAST BULLET

白天狗

第一部:壱の目覚めと暗躍する影

ep.1 侵略!!

 時は、現代。

この世は、かつてない脅威に脅かされていた。


「大人しくしろ!貴様はもう包囲されている!」


多数の警官に囲まれる少女。その手には、銃に似た物体を持っていた。

少女は、息を荒げる。


「クッ」

「自分が何をしたかわかっているのか!?

さぁ…まずはその銃を下ろせ!!」


「グッ…

ハハハハハハ!!」

少女は、笑い声を上げる。


「何がおかしい!?」


「下ろせ…だと!?

できるものか!

そのような口は、この私に敵うと思っていての口ぶりか!?」


「このッ…!!

構えろ!ヤツを捕らえるんだッ!!」


「フン、バカどもが」


警官たちは、彼女に向かって臨戦態勢に入る。


しかし、最悪なことに、彼女が持つ銃型生命体の戦闘本能を目覚めさせてしまった!!


いや、正しく説明するならその少女は、手にした銃型生命体に操られた状態だ。

その銃は、蜘蛛の顔と体の一部がくっついた、いかにもグロテスクな見た目。これぞ脅威の生命体『クリーチャーガン』である。


「たァッ」

一度闘争本能に目覚めたクリーチャーガンは止まらない。操られた少女は引き金を引く。

蜘蛛型クリーチャーガン『タイプインセクト0010:スパイダー』の銃口から、糸がレーザービームのように発射される。警官はその糸に心臓を貫かれ、絶命していく。


「ぐあああああああッ!!」


これだけでは終わらない。スパイダーの銃身から生えた脚で、ネットのような物を編み上げる。


「何をしてるんだ?」


不審がる警官一同。

すると編み上がったネットを飛ばし、警官を3人程捕らえた。


さらに、ネットに付いていた小型の蜘蛛が、警官の肉を食い千切り、血飛沫を舞い上げる。


「グァハハハハ!!潰す!潰す!!」

彼らの断末魔を聴きながら、少女は狂いながら笑い声を上げる。


「ここだな、通報があった場所は」

「むごいですね…犠牲者がこんなにも…」

その現場に駆けつけたのは、二人の少女だった。

彼女らは、クリーチャーガンを持った少女を追っている。


「早く敵を探し出すんだ!」


「探してるのは私か?」

「お前がやったのか!?」

「だったらなんだ?

テメェらも死にに来たみてぇだな!?」


「私は倒しに来た

その少女に取り憑いた、銃型生命体クリーチャーガンをな!!」

「生意気な口をッ

ブッ殺してやるッ!!」


スパイダーの少女は襲い掛かる。


「かかってきな…」

二人のうちの赤い髪の少女は、右腿につけたホルスターから包帯で巻かれた物体を取り出した。


包帯を取ると、ライオンのような形の銃の姿が顕になった。

彼女の名は、火咲 仁子ひざき にこ


「おりゃーっ!!」

「…グッ

アイツも…銃使いか!?」


仁子は、『タイプビースト0005:ライオン』から弾丸を放って戦う。

彼女もまたクリーチャーガンを所有するもの

…しかし、スパイダーの少女とは様子が違うのだった。


「仁子さん!気をつけてください!

そんなに連射したら、女の子に当たってしまいます!」

こう言い放って仁子に注意する水色の髪の少女は、彼女と同い年の清水 美久しみず みくだ。


「そんなこと気にしてられるか!

しかし…すばしっこいヤツ!」

「トロいわッ!

これで終わりにしてやる!!オラァーーーッ!!」


「うわっ!!」

少女が発射した蜘蛛の糸で、仁子はグルグル巻きにされてしまう。


「ぐっ…」

「ククク…

この糸を引っ張れば、お前の体はバラバラだ」


「仁子さん!」

「さあどうする!?」

「貴様、この…」


切羽詰まった空間に、サイレンが鳴り響いた。

「クソッ、増援が来やがったか…

まったくめんどくせぇ、覚えとけよ!」

その音を聞いたスパイダーの少女は、逃げ去っていった。


「はぁ…ひとまず助かった…」

「今回も手強い相手でしたね

明日、ちゃんと対策を考えないと…」

「それより、早くこれなんとかしてくれよ!」

「あ、すみません!」


「なんて固い糸、しかも鋭い!」

「おい気をつけろ!肌が切れちゃうだろ!」

「動かないでください!危ないです!」

美久は、仁子の体に巻き付いた糸を取ろうとするが、それは鋼のように硬く、取るのに苦戦するのだった。



 次の日、所は変わってここは金剛台こんごうだい女子高等学校の生徒会室。

ある生徒に対して、生徒会長が忠告していた。


「ねぇあなた!さっきから聞いてるの!?」

生徒会長3年E組・或葉 鳴あるは めい


「相変わらず眠たそうな顔して…

一体、何回目の呼び出しだと思ってるの?」

「ほい…」

「さっきから聞いてるつもりなの?

いい?あなた、これでもう2週間以上の遅刻よ!

それに授業中の居眠りも一体何回目なのよ!もう先生たちの中には諦めてるっていう人もいるけど…

私は全部知ってるのよ!もうこれ以上は…」


しばらくして会長の説教が終わると、生徒は颯爽と生徒会室を後にした。

「ハァ〜

やっと終わった、話だる〜…」

この生徒の名前は、1年D組の月岡 壱つきおか いち


「もう、どんだけ待たせるつもりなのよ?」

壱を待っていたのは、同じく1年D組の生徒、乙女ヶ原 奈緒おとめがはら なお


「話長かったんだからしょうがないだろー?

それでも待ってくれたのは褒めてやる、お前は立派な私の奴隷だ!」

「全然嬉しくないわよ」

「んじゃ、いつも通り背中に乗せてくれ」

「また!?いい加減に自分で歩いてよ!」

「折角同じ徒歩通学なんだ

それに家だって近い

何より、私は歩くのがめんどくさい!

こうしてる立ってる間にも、足が疲れてくるんだ!」


「もう!わかったわよ!

早く乗りなさい!」

奈緒は、嫌そうに壱を背中に乗せた。

「最初からそうしてくれればいいんだよ」


「全く、アンタねぇ…そんなだから友達いないのよ」

「お前だって同じだろ」

「うるさいわね!!」


「そうだ、奈緒」

「何よ!」

「このままゲームセンターに行ってくれ」

「はぁ!?何でよ!」

「取ってほしいクレーンゲームのぬいぐるみがある」



 「よっしゃ!またゲット!」


ゲームセンターでは、クレーンゲームに熱中する少女がいた。

彼女は壱たちと同じく金剛台の生徒である木田 四乃きだ しの


「あれ、噂の四乃って子じゃない?クレーンゲーム狂の」

「アイツのせいで潰れたゲーセンもあるみたいだよ!怖いよねー!」

四乃を見て噂話をする二人の客。


彼女は、1000年に一度のクレーンゲームの達人と呼ばれ、『クレーンゲーム狂』との二つ名を持つ存在であった。

そのアームに狙われた物は決して逃げることはできず、景品を取り尽くして、数々のゲームセンターを閉店寸前まで追い込んだほどである。


「おや?」

四乃は、クレーンゲームに苦戦する壱と奈緒の二人を見かけた。


「おい、もうちょっと右!何回落とせば気が済むんだよ!」

「あーもううるさいわね!アンタがゴチャゴチャ言ってるからでしょ!

それにアンタがずっと乗ってるから、動かしにくいのよ!

っていうかなんで私がお金出さなきゃいけないのよ!

お小遣いもう足りないのよ!」


「やれやれ、シロウト発見」

こう言うと、四乃は二人の元に向かった。


「ちょいとキミたち、下がってなー」

「アンタ、誰?」

と、奈緒。


「アレが欲しいんだよね?ウチにまかせなー!」

四乃は、瞬く間にクレーンを操作し、あっという間に標的のぬいぐるみを取って見せた。


「ほーらよっ♪」

「すごいわ、あんな一発で!」

「感心した、奈緒もこいつを見習うんだな」

「別に羨ましくなんかないわよ…」


こうしているのも束の間…

周りが騒がしくなるのを、彼女らは感じ取った。


「まさか…」

四乃は身構える。


「ギャハハハハハハ!!

こんな場所…ブッ壊してやるッ!!」

現れたのは、あのスパイダーの少女だ。


「あの子は…!」

少女を見て、奈緒が反応した。


「アイツを知ってるのか?」

壱は訊く。

「C組のまいじゃない!普段は大人しい子なのに、どうして!?」


「ここにいたら危ない、キミたちは逃げて!」

四乃は二人に促す。

「え?」

「早く!!」


奈緒は、壱を背中に乗せた状態で走っていった。

「一体何なのよ、あれ!」

「奈緒遅いぞ!速く走れ!」

「アンタが乗ってるせいで走りづらいのよ!ってか自分で走りなさいよ!」

「走ったら死ぬ」

「なわけないでしょッ!!」


「なにあれ、ヤバイよ!」

「とにかくクリハンに連絡しないと!」

その場にいた学生二人は、何やら組織のメンバーに連絡する。


「心配無用ッ」

「なんだテメェ!?」

四乃は、スパイダーの少女=舞の前に立つ。


「クリハン…もといクリーチャーガンハンターとはウチのこと…

その名は木田四乃!この世に蔓延る魑魅魍魎に鉄槌を下す!

覚悟しろ!」

「フフフ…テメェ、よほど死にてぇようだナ?

テメェからぶっ潰すッ!!」


「よし、いくよ!オラングタン!」

こう言って(ぬいぐるみが詰まった)バッグの中に手を突っ込む。

が…


「…ってあれ?

…ない!!」

「馬鹿め!くたばれ!!」

「くっ…!

ここはウチの聖域…荒らされては困る!」

「知ったことか!テメェごとグチャグチャにしてやる!」


「とにかくヤバイ!早く来てくれ、みんな!」

四乃は舞の攻撃から逃げ惑い、やっとの思いで出口へたどり着いた。


そこに、仁子と美久が駆けつけていた。

「お、ちょうどよかった!仁子っち!」

「四乃!お前また学校サボってたのか!?」

「それより、この中にクリーチャーガンを持った子が!」

この場は任せたと、逃げ去る四乃。


「おい待て!!」

「仁子さん!クリーチャーガンの退治を!」


「ヨウ

また会えたな♡」

建物が崩れ、舞は現れた。


「お前は昨日の!」

「今度こそブッ殺してやるからな!」

「こっちこそ、お前を倒してやる!」

「黙れッ!!」

舞は糸を飛ばし、攻撃を仕掛ける。

それを避け、反撃する仁子。


「おりゃーーーッ!!」

「フッ」

仁子の攻撃を、舞は糸を駆使して避けていく。

周りに糸を張り巡らせ、それを伝って変幻自在の動きを見せる。


「くっ…」

「どうした?全然当たんねェぞ!!」

「この…絶対に倒してやる…」

「無駄なんだよッ!!」

「うわっ!!」

仁子は、蜘蛛の巣によって包囲される。


「くそっ…」

「ククク、勝負あったなぁ…

死ねぇ!!」



「!?」

その時、どこかから飛んできた弾が、舞の立っていた糸を両断した。

「ウワァーッ!!」

そのまま、舞は地面へ落下する。

「痛て…」


「アイツは何者だ?」

落下した舞の近くには、ある少女が立っていた。

「クリーチャーガンを…握ってる…!?」

その少女は、なんと、壱だった。


「お前の相手はこの私だ」

「私の邪魔をするなんて、いい度胸じゃねぇか

まぁいい、ブッ潰してやるだけだッ!!」

舞は、壱に攻撃を浴びせた。

が、その攻撃は、壱の体を通り抜けていった。


「なッ…!?」

「それは残像だ」

壱が手にしているのは、『タイプモンスター0010:バク』。これには、幻覚を見せる能力があるのだ。


「アイツ…戦ってる!

私たちの味方なのか!?」

「おかしい…

クリーチャーガンを正常に扱えるのは、私たち4人のはずですが…」


「ハァ…ハァ…

あのヤロ…一体どこなんだ?」

戦いによって疲弊を見せる舞。

「油断したな」

壱は、舞が見せた一瞬の隙を見逃さず、スパイダーへ狙いを定めた。


「見極めた!」

スパイダーに向けて間髪入れずに攻撃を放つ。

バクから放たれた弾は、見事にスパイダーを貫いた。

「フッ」


「バ…カ…な…」

舞は、スパイダーを手放し、地面に落とすと、意識を失いその場に倒れた。

機能を停止したスパイダーのボディは粒子化し、消滅した。


「あの子…やりましたよ!

クリーチャーガンを撃破しました!」

「面白い!

明日、ヤツに話をつけるぞ!

新しいメンバーにするんだ!」

「え、そんな急に!話が早すぎます!」

仁子と美久は、壱について話し合う。


壱はバクを一旦手放す。それと同時に意識を失ったかのように倒れ込み、そのまま眠った。

バクは跳ねながらどこかへ消えていった。


「壱!こんなとこにいたの!?」

そこに、奈緒が現れた。

「急にいなくなったと思ったら、こんなとこで寝てるなんて!

全くだらしないんだから!ほんとに世話が焼けるわね!」

奈緒は、眠っている壱を背中に乗せ、歩き去っていった。


「ヤツは使えるぞ、確実に…」

その様子を見て、仁子は言い放つのだった。


To be continued…


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