勇者一行、犬同伴で魔王討伐に挑戦す(略称:勇者犬)

一ノ瀬 夜月

プロローグ 現実からサヨナラ


「はぁ〜ようやく退屈な授業が終わったぜ。」


 学校の帰り道、オレは一人そうつぶやいた。振り返ると、授業だけじゃなく、学校自体が嫌なんだ、きっと。



 折角せっかく受験勉強を頑張って、県内で偏差値の高い高校に進学したのに、周りのやつらと全然話が合わない。


 進学校だし勉強優先なのは分かるが、クラスでゲームの話を出来るやつがいないのは、ひどすぎるだろ!



 そんなわけで、学校でぼっちなオレは、部活や委員会に所属せず、ゲームに打ち込んでいる。他に楽しめる事が無いから、尚更なおさら熱が入るのかもな。


      

         ✴︎ ✴︎ ✴︎



 家に帰ると、速攻でゲーム機の前へ向かう。電源を入れ、コントローラーを弄ると、画面上にゲームタイトルが表れた。


     

       "勇者トラベル"


 

 最近、オレが苦戦しているゲームだ。何度挑戦したか覚えていないけど、未だに攻略出来ていない。


 まぁ、内容はシンプルで、主人公の勇者を操作しつつ、仲間達と協力して魔王討伐を目指すという物だけど...編成が偏っているのが問題なんだ。 


 内訳は、勇者(剣士)、神官、魔法使いの三名で、プレイヤーが編成をいじれない仕様だ。


「普通に考えて、前衛職一人と後衛職二人って、バランス悪いよな?」


 

 オレが操作する勇者(キャラ名:ユーヤ)は攻撃力が高いから、理想は前線で戦わせたい。


 でも他二人を放っておくと、HPが低いからすぐ死ぬしな〜。


 かと言って守りに入ると、強敵を倒しきれず、永久エンドレス状態になって...結局詰む。


 「はぁ〜後衛の味方を守れる、守備系のやつが居れば攻略出来るのに。」


 そう、オレが独り言を呟いた時、画面にゲーム内の女神の姿が表示されて、


 「貴方が盾役になれば良いじゃない。」


 とオレに言ってきたのだ。その時のオレは、何を言っているか理解出来なくて、聞き返そうとしたが、手遅れだった。


 画面がまぶしく光り、耐えきれず目をつぶると、体験した事の無い奇妙な感覚に包まれて...



 次に目を開けた時、視界に入ったのは、雪の上に立っている、動物の足?らしき物だった。

     

                 

                 続く

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